カリュプソの島、オジジアンの島2006-11-02 02:12:45

カリュプソの島
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 絵は、マンチェスター市立美術館に所蔵されているドレイパーの作品です。「カリュプソの島」というタイトルですが、海の重さが、素人目にもお見事です。

 この島は、ホメーロスの「オデュッセイア」に登場しています。

 長いトロイ戦争にようやく勝利したギリシア軍の英雄たちは、ギリシアへ帰還する道にも様々な苦難に遭い、無事に帰れた者は少数でした。とりわけ数奇な運命に会ったのが、木馬の計略を考え出して、勝利に大きく貢献したオデュッセウスです。
 このへんが「オデュッセイア」の話ですが、ポセイドンの怒りを買ってしまったオデュッセウスは、しまいには船も部下もすべて失って、10年間もの間に、島から島への放浪し続けていました。で、一番長居したのが、海のニンフ・カリュプソが住んでいた島で、ここで二人は愛し合い、7年間も暮らすことになりました。

 話によると、島には4つ清流が合流して一条となり、大地を巡っています。彼方のやわらかな野には、すみれとせりが咲き乱れて、動物相は主に梟、はやぶさ、うみからすなどの鳥です。榛の木、白楊、かぐわしい糸杉の森が生い茂る森に囲まれた岩屋のなかに、カリュプソが住んでいる、ということになっています。
 島の名前は、オギュギア(Ogygia)。

 とすると、島の住民は Ogygian、かも。

 Ogygian、競馬の世界では、オジジアンという訳で有名ですが、エイシンワシントンなどを輩出した種牡馬の名前です。

 その父は名馬ダマスカス(Damascus)。
 古都ダマスカスはシリアの首都。「架空地名大辞典(The Dictionary of Imaginary Places)」によると、西地中海に位置するオギュギア(Ogygia)島とは、地中海を隔てて、遙かに望む、ということになりますかね。

小田原わんぱくらんど2006-11-04 22:56:35

 今朝は子供を連れて、小田原こどもの森公園わんぱくらんどへ行きました。
 http://www.city.odawara.kanagawa.jp/public-i/park/o-wanpaku.html

 ここへはしばらく来ていなかったが、駐車場が広くなって、道路を渡る地下道も整備されたようです。
 今日は3連休の中日ということで、小さい子供がいる家庭を中心に、多くの家族連れでにぎわっていました。確かに、子供を遊ばせる遊具や滑り台が豊富で、まわりの環境も緑が豊かで空気がおいしく、しかも駐車も含めて無料なので、むべなるかな。

【レース観戦記】2006 Breeders' Cup2006-11-06 00:25:34

 J Sports ESPNが11/5(日)の19時~23時にBreeders' Cupを放送するというので、その時間まで一切の情報源を切断しました。斎戒沐浴こそしないが、はなはた神聖な気分でレース観戦に挑みました。

 大注目のClassicは、3番人気のInvasorが本命のBernardiniを力強く競り落として優勝しました。ウルグアイでデビューしたアルセンチン産馬という経歴はとてもユニークで、アメリカ競馬の新たなスターになるかも知れません。
 圧勝続きでここでも1番人気になった3歳馬のBernardiniは、これまでのレースほど前半は楽に追走できず、そこからいつものように強引にまくったが、最後は力尽きて完敗の2着でした。騎手は多少過信だったかも知れませんが、初めての強い古馬との対戦で破れ、なにか去年のディープインパクトの有馬記念を見たあとのような感じです。
 2番人気のLava Manは惨敗でした。去年のJCもボロ負けでしたが、どうもこの馬はカリフォルニアを出るとまったく走らないようです。

 Distaffは、人気の2頭Pin Islandが落馬(恐らく予後不良...)、Fleet Indianも途中でジョッキーが馬を止めていました。大波乱で、悪い意味で印象深いレースとなりました。

 さて、Invasorは外から強烈に差し切ったが、今日のチャーチルダウンズのダートは、最内の馬が連勝していた結果を見ているせいか、内枠がだいぶ軽い印象です。スムーズな序盤が切れているだけでなく、センセーショナルな勝ち方を見せたJuvenileのStreet Senseをはじめ、直線も内がよく伸びたような気がします。

 ちなみに山野浩一さんのホームページでBreeders' Cupの勝ち馬予想クイズに参加しましたが、あえなく8戦全敗、全レースはずれでした。BernardiniやFleet Indianのような大本命を入れているにも関わらず、です...

 それだけに今年のBreeders' Cupは結構荒れました。
 ということにしておきましょう (^^;)

【感想】PRIDE武士道-其の十三-PRIDEウェルター級グランプリ2006決勝戦2006-11-07 01:55:01

 全試合を見ていないですが、簡単に感想など。

 なんと言っても、ウェルター級トーナメントを制した三崎和雄選手に、まずはおめでとうと労うべきですね。トーナメント開始前は、大穴的な存在だったと思いますが、それがこの奇跡的な優勝、まさに大ブレイクですね。
 GRABAKAのもうひとり、郷野聡寛もよく頑張り、入場演出の話題性も含めて、トーナメントを大きく盛り上げました。

 準決勝で三崎選手を腕ひしぎ十字で下しながら、残念ながら負傷のために決勝戦を欠場したパウロ・フィリオも、さすがの強さと存在感でした。三崎和雄との準決勝は、玄人にも受ける好試合だったのではないでしょうか?

 五味隆典のライト級タイトル防衛戦など、判定決着が多かった中、きっちり一本勝ちしたのが青木真也です。ギリバート・メレンデスの負傷で相手は急遽代わった代打でしたが、前回の参戦時同様、極めの強さを見せて、鮮烈な印象を観客に残したはずです。

日本馬のメルボルンカップ制覇について2006-11-08 01:32:40

 角居厩舎のデルタブルースとポップロックがメルボルンカップで1、2着を独占した、というニュースが伝わってきました。
 例年よりメンバーが手薄という話も確かにありましたが、そういう話は関係なく、日本馬が勝った最も歴史のある大レースということで、これはもう文句なし大快挙だと思います。

 いまオーストラリアは景気が良いらしいですが、元々世界2番目の馬産大国、恐らく世界で最も多くの競馬場を持ち、そして一人あたりの馬券購入額は日本のそれを上回る競馬大国です。
 そのオーストラリア競馬で最大の祭典は言うまでもなく、ハンデ戦のメルボルンカップです。山野浩一さんの著作によると、メルボルンカップが近づくと、学校で先生が子供に予想させたり、子供たちのなかにブックメーカー役が馬券を売ったり、そしてレースの日はヴィクトリア州全体の休日となっているそうです。

 このオーストラリア競馬界最大のイベントで大活躍したことで、日本馬は大いに脚光を浴びたことだろうし、今後も注目されることになるのでしょう。

鄭愁予の詩2006-11-09 01:34:41

 鄭愁予詩集「夢土上」から、有名な傑作を2首写します。

 手元にあるのは選集で、ほかの詩集からも数多く収録されています。
 後期の「燕雲集」とかも洗練されていて良いですが、やはり「夢土上」の頃は、氏の絶頂期だと思います。美しすぎます。



 << 錯誤 >>

  我打江南走過
  那等在季節裏的容顔如蓮花的開落

東風不來, 三月的柳絮不飛
你底心如小小的寂寞的城
恰若青石的街道向晩
跫音不響, 三月的春帷不掲
你底心如小小的窗扉緊掩

我達達的馬蹄是美麗的錯誤
我不是歸人, 是個過客......



 << 偈 >>

不再流浪了, 我不願作空間的歌者,
 寧願是時間的石人。
然而, 我又是宇宙的遊子,
 地球你不需留我。
這土地我一方來,
 將八方離去。



 適当に訳もつけようも思ったんですが、とても僕には手に負えません。
 「心如小小的寂寞的城」はかろうじてなんとなるとして、「恰若青石的街道向晩」のような配置はどうしようもない。「向晩的青石街道」じゃ比べられまないですもの。
 「達達的馬蹄」とかもね。

【馬事爽論に書いた話】空を飛ぶ馬2006-11-11 01:36:42

 大昔のノートパソコンを処分するついてに、古いファイルがいっぱい出てきました。
 以下は約10年前、NIFTYの競馬フォーラム「馬事爽論」で書いた雑文です。まさか日本にも竜巻の大惨事が起きるなんて、当時は全然考えもしなかったんです。


 メデューサの血から生まれたペガサスを始め、空を飛ぶ馬の伝説は数知れない。現実に見た人はしかし、少ないでしょう。少ないというが、ないとは言いきれない、風の助けがあれば。(怪馬スレイプニルの8本足も風の象徴と考えられているらしい。)

 さて、きょうもドジャースの野茂投手が勝ち星を上げ、去年に続いてアメリカで大暴れ。野茂といえばトルネード、ラテン語のtornare(回転する)から名前を取ったトルネードは、もう太古の昔からアメリカ大陸で暴れ続けている。

 その暴れぷりといや、信じられないような逸話が多く残されている。動物史上に残る記念すべき話(^^;)として、家畜の群がそっくり空中を舞い上がり、「巨大な鳥の群が空を飛んでいるようだった」というのがある。その事件について、別の気象学者は「家畜の群が世界中をものすごい速さで飛び回った」と記しているらしい。
 「風の博物誌」(ライアル・ワトソン)に出ているが、トルネードに吸い上 げられたある男の話がおもしろい。「天に昇っていく間に手を伸ばしたら、馬の尻尾かたてがみか定かではないが、なにかに触れた。彼はそれをしっかり握りしめたが、空の遠征の途中で馬とはぐれてしまい、地上に戻ってみると片手に馬の毛をいっぱいにつかみ、もう一方の手には自分の帽子を握っていたという。」

 運が良ければ、空を飛ぶ馬ならぬ、空にとばされる馬をみることが可能かも知れない。<---良好な動態視力を必要とするかも(^^;)。

 ところで、「大馬風」という言い方があるんでしょうか?やはり馬を飛ばすぐらいの強風をいうのかな?

【馬事爽論に書いた話】泳ぐ馬2006-11-11 23:35:46

 空を飛ぶ馬に続き、泳ぐ馬の話です。

 これも大昔、パソコン通信時代のNIFTY競馬フォーラム「馬事爽論」で書いた話です。
 内容はともかく、懐かしいですな。


 6階にある職場の窓からは海が見える。晴れる日には燦々とエメラルドブルーの色彩を輝き、これからの夏日の賑わいを迎えようとする。

 「4つ足の動物に溺れるものはいない」と人は言う。人間が泳げば、馬だってもちろん泳ぐ。プール調教などはとくにトレセンの日常風景と化している様子。
 もともと海の神ポセイドンはしばしば馬の姿で現れ、ギリシャ神話のペガサスも水の神と縁が深いと伝わられている。

 馬は好んで泳ぐかどうかは定かではないが、生命にかかわる危機が迫るときには驚異的な泳ぎを見せたりするらしい。

 「プーサン・3」に載っているラプソデーの話は悲しくも、印象深いものであった。
 昭和33年9月、前年の菊花賞馬ラプソデーは武藤厩務員とともに伊豆の温泉で鋭気を養っていた。だが不運なことに、神奈川県に台風22号が上陸して、狩野川を氾濫させ、伊豆の災害対策本部の発表による死者672名、行方不明192名というとてつもない大災害となり、39歳の武藤さんも残念ながら帰らぬ人となった。
 「プーサン」の記述によると、濁流に飲み込まれたラプソデーは、暗黒の恐怖のなかを4時間にわたって泳ぎ続け、全身に深い傷を負いながらも、ついに奇跡としか呼びようのない生還を果たしたという。

 佐藤正人さんの「蹄の音に誘われて」にはさらに奇跡的な話があるが、長くなるので、いったん切ります。

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 英国のグランド・ナショナルは不思議なレースである。障害レースの中では賞金も注目度も文句なしのNO.1だが、8歳以上限定のハンデ戦であるため、4マイル半を駆けるこの過酷なレースは格付け上、G3戦だと聞いている。
 それでも歴代勝ち馬一覧を見ると、19世紀のThe Colonel、チェトナムゴールドカップを5年連続制覇したGolden Millerや国民的英雄となったRed Rumなど、スティープルチェイスの名馬たちが顔を覗かせている。

 「蹄の音に誘われて」の中に、グランド・ナショナルのある勝ち馬に関する不思議な話が紹介されている。

 モファイ(Moifaa)は、1895年にニュージーランドで生まれ、明け8歳になっ た時はニュージーランドの障害の大レースのほとんどを勝っていたという。そして明け9歳になった1903年は、グランド・ナショナルを目指すべく、数千人もの人が集まった中で、英国に向かう船に載せられた。
 ところが、その貨物船は2日ばかり走った後、恐ろしい暴風雨に遭って沈没してしまった。乗組員は一人として発見されず、モファイもまた死んだと思われていた。

 数カ月後、ニュージーランドからほど遠くないある無人島の近くを船で通ったマオリ人の漁夫が、島から夜の微風にのって伝わる不思議ないななきに気がついた。好奇心に騒ぎ立てられた数人のグループが島へ行き、そして1頭の馬を発見した。やがて、その馬はモファイであることが判明された。
 船をも飲み込む風雨の中を、モファイがどのように泳ぎ、生き延びたかは、いまをもって謎とされているという。

 ニュージーランドに帰って、長い休養の後に再び調教を始めたモファイは1年遅れて、1904年のグランド・ナショナルに挑戦した。
 タフな障害を次々とまるで泳ぐように飛んでゆくモファイは楽勝して、この伝統あるレースの勝ち馬リストに名を並べた。

 ちなみに、モファイの父はナタトール、ラテン語で「泳ぐ者」という意味らしい。