馬の走り方 ― 2012-04-09 23:02:47

今日(4月9日)のGoogleロゴは、疾走する馬のアニメーションです。
カーソルを合わせると、「エドワード・マイブリッジ生誕182周年」の文字が見えてきますが、エドワード・マイブリッジはイギリス出身の写真家です。元カリフォルニア州知事のリーランド・スタンフォードから依頼を受け、走る馬の4本の足がすべて地面から離れる瞬間の写真を初めて撮影した人です。
疾走する馬が全部の足を同時に地面から離すことがあるかどうか、というのは、手元の「馬のすべてがわかる本」(原田俊治、PHP文庫)によると、実は古代ギリシャから綿々と続いていた議論のテーマでした。
しかしなにしろ疾走する馬の足の動きが速くて、観察者は自分の見ているものに確信を持てなかったのであります。
エドワード・マイブリッジは独創的な撮影方法を考案し、苦労した末に依頼をみごと応えました。また、そのために考案した連続写真の撮影方法は、後に映写機、映画の誕生に結びついたとも言われ、カメラの歴史の本には必ずと言って良いほど、取り上げられています。
運動中の馬の足の運びは、馬術家によると10種類以上と数えられますが、常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、および駆歩(かけあし)の3つに分類することが多いです。
常歩とは、馬がゆっくり自然に歩いている状態です。一歩ずつ等間隔に移動し、蹄音は4拍子、全部の足が同時に地面を離れることはありません。
速歩とは、前後の足二本が一組となって同時に地面を離れ、同時に着地する歩様です。トロット(Trot、斜対歩)とペース(Pace、側対歩)の2種類に大別でき、前者は斜め前後の2本(左前と右後、または右前と左後)が同時に動き、後者は同じ側の2本(左前と右後、または右前と左後)が同時に動く走り方です。
駆歩は、最もスピードの速い歩様です。そのなか、日本語で競走駆歩もしくは襲歩とも呼ばれるのがギャロップで、緩駆歩の訳が割り当てられるのがキャンターです。ギャロップの蹄音は四拍子、右後→左後→右前→左前、もしくは左後→右後→左前→右前の順で着地します。キャンターの蹄音は三拍子、右後→左後と右前同時→左前、もしくは左後→右後と左前同時→右前の順で着地します。いずれも全部の足が地面から離れる浮遊期は、一完歩ごとに一度発生します。
速歩でも、全部の足が地面から離れることが、ごく短時間ですが、一完歩ごと二度生じることがあるそうです。「馬のすべてがわかる本」によると、エドワード・マイブリッジが撮影して、その事実を突き止めたそうですが、少なくともGoogleロゴに載っているのは、速歩中の馬ではなく、明らかに馬がギャロップしているときの写真です。
日本でもかつて速歩競走が多く行われましたが、だいぶ前に書いた(http://tbbird.asablo.jp/blog/2007/04/26/1466536)ように、キャンターだけでなく、ペースも異歩法とされ、失格の対象です。アメリカなどでは、速歩競走のなかでもトロットとペースのレースが約半々だったようです。
同じ側の手と足が同時に動くと、たどたどしい幼稚園児の行進を思い浮かびそうですが、馬の場合、ペースするときに後肢の踏み込みが前肢にぶつかることがなく、歩幅を大きく踏み込める利点があります。また、左右の動きが大きくなる代わり、上下の動きは少なく、馬車を引くとも安定性も良いと言われ、わざわざその歩様ができるように調教されています。
実はモンゴル馬や北海道和種は、基本的に側対歩で走ると聞きます。象、ラクダ、ライオンなどもそうです。
「馬たちの33章」(早坂昇治、緑書房)によれば、昔の武士が乗る馬は側対歩で走ることが要求されるそうです。馬上から矢を射る場合、上下動が少ない側対歩が良いとされ、側対歩のできない馬の調教法などが馬術伝書に記されています。
ついてに、時代劇で俳優さんが馬の左側から乗ることをよく見かけますが、これは時代考証の誤りです。西洋式の馬文化が入る幕末以降ならいざ知らず、昔の武士が馬に乗るときは、必ず右側から乗っていました。室町時代以降、様々な馬術の流儀が生まれましたが、すべて右乗りが原則でした。
カーソルを合わせると、「エドワード・マイブリッジ生誕182周年」の文字が見えてきますが、エドワード・マイブリッジはイギリス出身の写真家です。元カリフォルニア州知事のリーランド・スタンフォードから依頼を受け、走る馬の4本の足がすべて地面から離れる瞬間の写真を初めて撮影した人です。
疾走する馬が全部の足を同時に地面から離すことがあるかどうか、というのは、手元の「馬のすべてがわかる本」(原田俊治、PHP文庫)によると、実は古代ギリシャから綿々と続いていた議論のテーマでした。
しかしなにしろ疾走する馬の足の動きが速くて、観察者は自分の見ているものに確信を持てなかったのであります。
エドワード・マイブリッジは独創的な撮影方法を考案し、苦労した末に依頼をみごと応えました。また、そのために考案した連続写真の撮影方法は、後に映写機、映画の誕生に結びついたとも言われ、カメラの歴史の本には必ずと言って良いほど、取り上げられています。
運動中の馬の足の運びは、馬術家によると10種類以上と数えられますが、常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、および駆歩(かけあし)の3つに分類することが多いです。
常歩とは、馬がゆっくり自然に歩いている状態です。一歩ずつ等間隔に移動し、蹄音は4拍子、全部の足が同時に地面を離れることはありません。
速歩とは、前後の足二本が一組となって同時に地面を離れ、同時に着地する歩様です。トロット(Trot、斜対歩)とペース(Pace、側対歩)の2種類に大別でき、前者は斜め前後の2本(左前と右後、または右前と左後)が同時に動き、後者は同じ側の2本(左前と右後、または右前と左後)が同時に動く走り方です。
駆歩は、最もスピードの速い歩様です。そのなか、日本語で競走駆歩もしくは襲歩とも呼ばれるのがギャロップで、緩駆歩の訳が割り当てられるのがキャンターです。ギャロップの蹄音は四拍子、右後→左後→右前→左前、もしくは左後→右後→左前→右前の順で着地します。キャンターの蹄音は三拍子、右後→左後と右前同時→左前、もしくは左後→右後と左前同時→右前の順で着地します。いずれも全部の足が地面から離れる浮遊期は、一完歩ごとに一度発生します。
速歩でも、全部の足が地面から離れることが、ごく短時間ですが、一完歩ごと二度生じることがあるそうです。「馬のすべてがわかる本」によると、エドワード・マイブリッジが撮影して、その事実を突き止めたそうですが、少なくともGoogleロゴに載っているのは、速歩中の馬ではなく、明らかに馬がギャロップしているときの写真です。
日本でもかつて速歩競走が多く行われましたが、だいぶ前に書いた(http://tbbird.asablo.jp/blog/2007/04/26/1466536)ように、キャンターだけでなく、ペースも異歩法とされ、失格の対象です。アメリカなどでは、速歩競走のなかでもトロットとペースのレースが約半々だったようです。
同じ側の手と足が同時に動くと、たどたどしい幼稚園児の行進を思い浮かびそうですが、馬の場合、ペースするときに後肢の踏み込みが前肢にぶつかることがなく、歩幅を大きく踏み込める利点があります。また、左右の動きが大きくなる代わり、上下の動きは少なく、馬車を引くとも安定性も良いと言われ、わざわざその歩様ができるように調教されています。
実はモンゴル馬や北海道和種は、基本的に側対歩で走ると聞きます。象、ラクダ、ライオンなどもそうです。
「馬たちの33章」(早坂昇治、緑書房)によれば、昔の武士が乗る馬は側対歩で走ることが要求されるそうです。馬上から矢を射る場合、上下動が少ない側対歩が良いとされ、側対歩のできない馬の調教法などが馬術伝書に記されています。
ついてに、時代劇で俳優さんが馬の左側から乗ることをよく見かけますが、これは時代考証の誤りです。西洋式の馬文化が入る幕末以降ならいざ知らず、昔の武士が馬に乗るときは、必ず右側から乗っていました。室町時代以降、様々な馬術の流儀が生まれましたが、すべて右乗りが原則でした。
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