平安京の雨、江戸の風呂2011-08-22 16:12:09

 8月の前半は、雨もほとんど降らず、灼けるような暑さでした。それが一転してここ数日、扇風機も要らないほどに涼しくなり、実に過ごしやすいです。なかなか止まない雨だけは不便ですが、そこまでの贅沢は言えないでしょう。

 これは本で読んだ話ですが、白河法皇が「国是一切経」を金泥で写させたものが完成したとき、法勝寺で供養することになりました。ところが雨が続き、法皇臨幸されるはずの式典が再三延期になり、今度こそはの四度目もまた雨に降られると、法皇が大いに怒り、雨水を器に収め、牢屋に入れたそうです。
 禁固刑よりも、ムチ打ちの刑に処したらどうかと思いましたが、いや、これは荻野由之という明治の史学者が、平安貴族がいかに雨を畏れていたかを論じた随筆です。鎌倉の武家が雨のなかでも平気なのを見て、公卿日記のなかでいかにも不思議そうに書き留めたそうです。


 さて、涼しさのおかげで供電事情は当分余裕があるそうですが、省電力のための輪番休日は、だからと言って急に変えられません。
 雨が降りそうでなかなか降らない鉛色の空を見ながら、なんだかバッティングセンターへ行くのも面倒くさくなり、だらだらとしながら、「近代デスタルライブラリー」で式亭三馬の「浮世風呂」を適当に読んでいます。
 <http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/877812>

 「そうさ、花を活けるとか、琴を弾くとかは、世帯持ちにはできないよ。炊事洗濯の家事や、近所付き合いをして、無駄な出費がないように節約したり、主婦はやることがたくさん。それで文句を言われたら、とてもやってられませんね。」

 「千代紙だの色紙だの切り刻んでは散らかし、おもちゃ絵を買い込んでは、箱いっぱいにためこんで、私はびっくりしましたよ。三番目の子は、絵入り小説が好きで新刊が出るたびに買い込み、これがツヅラいっぱい。ヤレ誰の絵がすてきだの、ヤレ誰の方がうまいのと、画工の名まで覚えて、それはそれは今の子供たちは達者でございますよ」
 「そうですねぇ。私どもの幼少な時分は、ネズミの嫁入りや昔話の絵本が楽しみでしたが。」

 意訳ですが、江戸の時代の主婦の愚痴や会話は、こうして見ても、意外に古くさく感じません。
 「いまの子供たちは」とか、「私どもの幼少な時は」とか、世間のお母さん方もよく口にするセリフではありませんか?

コメント

_ 花うさぎ ― 2011-08-22 23:29:53

確かに、うちの子供たちはまだ年端もいかぬのに、一家の主婦の私でさえ、できないようなぜいたくを平気でするようなおぼっちゃま、お嬢様に育ってしまいました。
なので、「いまの子供たちは」だの、「私どもの幼少な時は」だのと、
Fujimotoさんもご存じの通り、私もよくブログでぼやいておりまする。

でも、今はよいですが、この先の世の中を思うと、
はたしてこの子たちの将来よりも、私の来し方のほうが、恵まれたものになるのではないかと思えてしまい、何とも暗い気持ちになってくることがあります。

_ 蓮 ― 2011-08-23 07:51:00

出勤前に目を通しました。
今日、こちらは涼しくて、雨模様です。

_ T.Fujimoto ― 2011-08-23 21:08:24

花うさぎさん、若い人が贅沢できるようになったのも、運よく、物に不自由がない時代になったからでしょうね。
今はよいがこの先がどうなるかが心配なのは、江戸時代の人も言っているようです。確かに良いときばかりではなく、いつどうなるか、世の中一寸先は闇、なのかも知れません。

_ T.Fujimoto ― 2011-08-23 21:11:31

蓮さん、言っているそばから天気が変わり、今日は日が高く、暑い真夏日でした。
なかなか体調管理も大変ですね。

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