オグリキャップの名を呟く2010-07-05 17:49:41

 大勢の仲間に入るように、稀代の名馬・オグリキャップにも迎えが来ました。

 競馬の歴史上、オグリキャップより強い馬もいたのでしょう。しかし彼ほど「劇的」な名馬は、ほかには見当たらないと思います。
 バブルに沸き、何もかも「劇的」であったあの時代においてさえ、オグリキャップは飛びぬけて、最もドラマチックな競走生活を送っていました。

 地方育ちのゆえ栄光のクラシックに登録がなく、裏街道を驀進していた、噂の転入生の時代。先輩・タマモクロスとの葦毛対決に競馬キチの血潮を沸騰させた最初の秋。酷使と批判されながらも健気に走り続け、奇跡のマイルCS、ジャパンカップ連闘から、最後に力尽きた有馬記念まで、完璧に世間の涙を誘った二度目の秋。そして、もちろん完璧の安田記念から不振に喘ぐ秋、そして有終の美を飾った歓喜のラストランまで、あくまでも波乱万丈の最後の、三年目の走り。オグリキャップは長編の叙事詩、ど演歌、人間くさいヒーロー、伝奇です。

 田舎から上京して、見知らぬ都会で奮闘する自身に投影し、オグリに励まされた、とこぼす若者。くすんだ灰色の毛色とやっけに離れた両目の間隔だけが似ているぬいぐるみを抱いて、おぐりん、カワイイ!と叫ぶ新たな競馬ファン。こんなむちゃくちゃなローテーションをオレは認められないと否定しながら、酔ったときだけ、あいつはすごいや、と嘆くオールドファン。どの口で語るオグリキャップもすべてではないですが、どの目に映るオグリキャップも真実でありました。

 オグリキャップ、いまは、その名を呟くだけです。

ダビデ王の羽なし矢2010-07-19 01:48:38

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 つぼみさんのブログに興味深いウツボカズラの記事が載っています(http://tubomim.exblog.jp/14154266/)。食虫植物のウツボカズラとその仲間は、東南アジアを中心に点在し、特にボルネオ島がその本場だそうです。
 東南アジア、特にスマトラ、パラワン、ボルネオあたりは甲虫の宝庫としても知られています。巨大なコーカサスオオカブトやオオヒラタクワガタなどが、もし食虫植物と対決したらどうなるか、想像するだけでなんだかおもしろそうです。

 ウツボカズラはマダカスカル島までその姿は見つかっていますが、残念ながらアフリカ大陸のほうには生息していないそうです。残念、というのは、もうひとつの夢の対決の相手が、「虫屋の落とし文」(奥本大三郎)の表紙にも登場しているゴライアスオオツノハナムグリです。奥深いアフリカの熱帯雨林に生息しているこの巨大甲虫は、南米のヘラクレスオオカブトのような長い角を備えてはいないものの、ある意味、ヘラクレス以上に厚重で頑丈そうです。その体長が110mmに達し、世界で最も重い昆虫だと言われています。

 名前のゴライアスは、聖書に登場する大男のゴリアテに由来しています。


 僕が紅顔の美少年、もとい、ニキビ面のブ少年だった頃、なぜか新約聖書に魅せられた時期がありました。キリスト教徒にはならなかったのですが、最初の福音書マタイ伝の冒頭に、アブラハムがイサクを生み、イサクがヤコブを生み、ヤコブが...長々とイエスの家系を説明しているところがありますが、この人名の羅列を音読しているうちに、まるで催眠術の呪文にかかったような感じで引き込まれしまいました。
 アブラハムからダビデ王までが14代、ダビデ王からバビロン捕囚までが14代、バビロン捕囚からイエス・キリストまでが14であることを、マタイ伝は書いています。イエスが由緒正しきユダヤ人の継承者であることを説明するには、ユダヤ人の祖・アブラハム、そしてユダヤ人歴史上唯一の大王国を築いたダビテ王に繋げる必要があったかも知れません。
 マリアは処女のままでイエスを身ごもったので、血統もなにもあったものじゃない、とも思いますが。

 旧約聖書のサムエル記によれば、イスラエル軍と対峙する宿敵ペリシテ軍から、ゴリアテという剛勇無双な大男が進み出て一騎打ちを呼びかけたとき、ただひとり怖じけずに挑んだのが、青年時代のダビデでした。
 ひょろひょろ出てきた若造を、巨人・ゴリアテはたぶん鼻で嗤ったが、そこはなめちゃいけない、弁慶を向こうに回して戦った牛若丸よろしく、こちらダビデも実は秘技・石投げの名手でした。ゴリアテがダビデの投げた石で眉間を割られて倒れたところ、ダビデが飛びかかって、ゴリアテの大きな剣を引き抜いては、呆気なくその首を刎ねたのであります。

 ミケランジェロのダビデ像が有名ですが、その左肩にある布のような物が石投げ器です。石を入れてブンブン振り回しながら、加速したところで、エ~と狙いを付けて投げるわけです。
 ちなみに、ダビデ像が寸糸不掛スッポンポンなのは、旧約聖書に「それらを脱ぎ捨て」と書いてあったからそうです。
 味方軍のみながゴリアテの猛々しさに震えているところ、勇敢にも名乗った若いダビデを、サウル王が自らの鎧を着せました。が、なにしろ元は羊飼い、たぶんそんなものは付けたことがなく、どうも動きづらいのか、結局その鎧を脱ぎ捨てました。いや、脱ぐのは鎧だけでよく、強敵の前にフルチンになるまで脱ぐ必要はまったくないと思いますが。

 ともかく、ダビデが投石の名人であったのは、羊飼いだったためです。
 「英国大使の博物誌」を読むと、モロッコなどで、牧羊犬がいなくても、群を外れそうな羊の前に小石を上手に投げて群を保つ少年少女を、作者の平原毅さんは何十回となく見たそうです。

 石投げと言えば、中国の水滸伝にも没羽箭・張清という名手が登場します。百八星のなかでもほぼ一番最後に登場した人物ですが、その投石の技によって梁山泊の英雄たちがパタパタを打ち落とされる場面は、なかなか印象深いものでした。
 和弓の矢はいまでも矢羽などを付けて射る軌道を安定させますが、もちろん石には矢羽がないので、それで「没羽箭」の二名が付いたかと思います。

 いまひとつ、ダビデとゴリアテの話を対比しておもしろいと思ったのは、かの項羽の逸話です。
 広武山での漢・楚両陣営が対峙していたとき、漢軍に楼煩という騎射のうまい兵士が出てきました。楚の壮士が挑戦して三たび射殺されたのを項羽は大いに怒り、自ら甲をつけ戟をもって挑戦しました。楼煩が射ようとすると、項羽は目を瞑らせて叱呼し、あまりの威勢に楼煩がおののいて、目は視ることもできず、逃げ帰ってしまったそうです。
 さすがは西楚の覇王、マジンガーZの光子力ビームばりの威力です。飛び道具がいつも勝つとは限りません。

 冒頭のウツボカズラに話が戻りますが、ウツボはなにかと思ったら、調べると、靫(うつぼ)だそうです。この食虫植物の花穂が矢を入れる靫の形に似ていることに由来しています。矢が刺さっている風でないので、空っぽの矢巣、ということになるのでしょうか。


 ちなみに、3連休最終日の明日は、子供をポケモンの映画に連れて行く約束をしていますが、ウツボカズラをモチーフにしたポケモンも存在します。上の写真のウツボット、そしてその進化前のウツドンがそうです。
 ポケモンの世界では、「草属性」のポケモンは虫タイプの技に弱いのですが、一応食虫植物なので、こいつらには虫に強い「毒属性」も併せて与えられています。
 あ、そう言えば、ウツドンのさらに進化前のポケモンもいました。名前はマダツボミです。名前の意味はわかりません。まだまだつぼみ(蕾)に過ぎない、ということでしょうか?
 つぼみさんとなんら関係がないのは、むろん言うまでもないです(^^;)

酔っぱらいのニュース斜め読み2010-07-24 22:45:24

 あまりに暑いので、発泡酒を片手に、ネットニュースを斜め読みしました。(我が家ではペーパーの新聞を取らなくなって久しい...)


・東京・大手町で4日連続猛暑日、ほか各地でも真夏日...

 まあ、その暑い暑いの記事です。夕方になっても地面から昼間の熱気がのぼって、ぶりかえしてくるからタチが悪いです。
 でも夏は暑い、これまたしごく当然なのです。

 最高気温が35度以上だと「猛暑日」、30度以上だと「真夏日」、最低気温が30度以上だと「熱帯夜」など、ほかの国もそうなのか浅学ゆえわかりませんが、我が日本ではマスコミで使う言葉を、かなりきっちり基準を決めていますよね。
 30度に達さなくても35度越えても、ときには「真夏日」と表現したい気分ですが、ニュースや新聞記事だとやはりだめなのですね?


・大相撲の組長観戦問題で「監督責任」調査委員を解任...

 ふむ、ふむ。最近ホットになってきた話題に関連してますね。
 大相撲と侠客、やくざの結びつきは古くから知られ、組織としての社会的健全性はどうか、とまずは問われますわな。しかし、暴力団組長が相撲観戦するのは、法律でも禁じられているのですか?

 先日解雇された16代大嶽(元貴闘力)は、貴乃花の協会改革問題では男気のあるヒーローに祭りあげられ、野球賭博問題ではゴロツキ呼ばわりされました。
 どちらも事実は含まれるだろうが、どちらも事実だけではなさそうです。盛り上がった話をさらに盛り上げようとするのは、営利団体が大半であるマスコミの宿命で、どうしても一辺倒になりがちだと思います。報道を鵜呑みにし、ペンの暴力の一端に自分がなりはしないかを、時々自省しながら、物事は考えたいです。


・金賢姫元死刑囚 羽田から帰国 「VIP待遇」に非難も

 実際VIPなのでしょうから、さしずめVIP待遇は当然です。信号操作まではさすがにやりすぎかも知れませんが。

 そう言えば、テレビニュースも「金元死刑囚」という呼称を使いました。

 マスコミの呼称は不思議に思うときがあります。
 ○○社長、××選手、△△議員など、肩書きを付けて呼ぶのは、まあ、日常会話でも使うから違和感はないです。しかし、小泉今日子が道路交通法違反で書類送検され、容疑者となった際のマスコミは「小泉タレント」と呼びました。同じくSMAPの稲垣吾郎が道路交通法違反と公務執行妨害で逮捕された事件の報道で、民放各局は「稲垣メンバー」を使いました。
 肩書きの付け方に苦労しているのは理解しますが、残念ながら「小泉タレント」も「稲垣メンバー」も、日本語としてはしっくりこないです。
 こうも苦労するなら、一律「さん」付けにするか、いっそう肩書きを捨て、敬称略にすればどうかと思いました。

 金賢姫の場合、元死刑囚、元工作員なのは間違いないです。なにもこの呼び方が不当だと思ったわけではありませんが、「元」ではない今の肩書きはありそうだし、ほかにも呼び方はできそうです。そろいもそろいすぎたところが気になりました。
 報道の自由を掲げながら、もしどこかで情報を操作、規制している人たちがいると考えると、ちょっと怖いかも知れません。

「林木株株尽棟材」、上聯求む2010-07-28 23:12:55

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 先月のはじめ、sharonさんのところ(http://daybydayon.exblog.jp/10771356/)に残したゴミコメントにもある通り、僕が通っていた台北の小学校は、少なくとも日本から見ると、ものすごいマンモス校です。

 4年生のときに引っ越ししてバス通学になりましたが、その前の3年生の頃は、なぜかとても早い時間帯に登校していた時期がありました。全校生徒のなかで一番早く学校に着くことも一度ならずでした。なぜわかるかと言いますと、あまり早く着くと、校門はまだ開かないからです。6時すぎぐらいになって、守衛さんが歯を磨きながら、おもむろに校門を開くのを見るのは、3、4千にのぼる生徒のなかでも数人程度です。僕と弟だけのときもあったかと思います。

 上の写真は、ネットで見つけた、いまの母校の校門です。
 僕が通っていた頃、早朝に守衛さんが開いた門はこの写真のものではなく、もうちょっとだけ控え目な佇まいだったと思います。高い看板ができたのも、僕が卒業した後です。

 当時の門は、左右両側には校長先生が揮毫した「対聯」がありました。僕が覚えているのは下の句だけです:

 「林木株株尽棟材」
 
 学校名は「吉林」ですので、上のは「吉」の文字から始まるものに違いないですが、どうしても思い出せません。思い出せないと、ますます気になります。同じものでなくていいので、誰か拵えてくれませんか?