世界の歴代最強馬(1)2007-01-02 07:49:00

 史上最強馬はどの馬か?
 ちょっとだけでも競馬に詳しくなれば、しょせんまじめな答えが出ない問題だと理解できるはずです。
 しかし、競馬ファンなぞ、答えのないクイズこそが興味津々で大得意とする人種であり、かくして古今東西、様々な最強馬論議が出されてきました。


 古くは19世紀、英国の「The Sporting Times」誌が1886年6月、有名なオーナー、調教師、騎手、ジャーナリストなど約100人を対象にしたアンケートが残っています。

 質問は2つ、1つ目は、19世紀の優れた競走馬ベスト10を挙げる、というもので、集計すると、以下の結果になっていたそうです:

1.  Gladiateur (1862)  = 65票
2.  West Australian (1850)  = 63票
3.  Isonomy (1875)  = 62票
4.  St Simon (1881)  = 53票
5.  Blair Athol (1861)  = 52票
6.  The Flying Dutchman (1846)  = 49票
7.  Virago (1851)  = 36票
    St Gatien (1881)  = 36票
9.  Ormonde (1883)  = 34票
10. Robert the Devil (1877)  = 31票
11. Cremorne (1869)  = 30票
12. Foxhall (1878)  = 27票
    Plaisanterie (1882)  = 27票
14. Stockwell (1849)  = 24票
15. Bay Middleton (1833)  = 22票
16. Barcaldine (1877)  = 21票
17. Thormanby (1857)  = 16票
18. Plenipotentiary (1831)  = 15票
19. Galopin (1872)  = 14票
20. Crucifix (1837)  = 13票
    Teddington (1848)  = 13票
22. Touchstone (1831)  = 12票
    Blink Bonny (1854)  = 12票
    Springfield (1873)  = 12票
    Bend Or (1877)  = 12票
26. Wheel of Fortune (1876)  = 11票
27. Priam (1827)  = 9票
    Fisherman (1853)  = 9票
    Achievement (1864)  = 9票
30. Velocipede (1825)  = 8票
    Voltigeur (1847)  = 8票
    Blue Gown (1865)  = 8票
33. Favonius (1868)  = 7票
34. Surplice (1845)  = 6票
    Hermit (1864)  = 6票
    Sterling (1868)  = 6票
37. Don John (1835)  = 5票
    Alice Hawthorn (1838)  = 5票
    Macgregor (1867)  = 5票
    Doncaster (1870)  = 5票
    Kincsem (1874)  = 5票
   Bendigo (1880)  = 5票

 19世紀と言っても、このアンケートが行われたのは1886年ですので、近代競馬黎明期の19世紀初頭も除けば、対象はほとんど半世紀のみ。
 9位にOrmonde(オーモンド)が登場していますが、これは、まだダービーを勝つ前の現役馬でした。クラシック3冠を達成して、16勝無敗のままで引退したあとの調査なら、もっと順位があがったかも知れません。

 40位タイまでの42頭中、牝馬は、7位のVirago、12位のPlaisanterie、20位のCrucifix、22位のBlin Bonny、26位のWheel of Fortune、27位のAchievement、37位のAlice Hawthorn、37位のKincsem、計8頭です。
 英国で行われたアンケートなので、英国で調教していた馬がほとんどで、例外は12位のPlaisanterie(フランス)と、37位のKincsem(ハンガリー)の牝馬2頭だけです。
 但し、1位に選ばれていたGladiateurも、基本的に、フランスオーナーのフランス産馬です。

 このなか、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」(1994年頃選)にも選ばれているのは、1位のGladiateur、2位のWest Australian、4位のSt Simon、6位のThe Flying Dutchman、9位のOrmonde、22位のTouchstone、22位のBend Or、37位のKincsemです。
 逆に山野さんに選出されて、前記アンケートのランキングに入っていないこの時代のヨーロッパ馬は、Birdcatcher(1833)と Hampton(1872) の 2頭です。

 原田俊治さんの「世界の名馬」(1972年頃)、「新・世界の名馬」(1993年頃) に、選ばれているこの時代の馬は、Gladiateur、St Simon、Kincsemの3頭だけです。

 「Notable English and Irish Thoroughbreds」(1984年出版)という書物がありますが、なんと、50頭のうちに、半分の25頭までが19世紀に生まれた馬を選出しています。上のアンケートの馬に含まれているのは、Gladiateur、West Australian、Isonomy、St Simon、Blair Athol、The Flying Dutchman、Virago、Stockwell、Bay Middleton、Plenipotentiary、Stockwell、Galopin、Crucifix、Touchstone、Blink Bonny、Wheel of Fortune、Priam、Velocipede、Alice Hawthornの19頭。
 IsinglassやSceptreなど後に生まれた名馬もいますので、この本に選ばれてアンケートのTop40に含まれていないのは、Beeswing(1833)の1頭だけです。

 ちなみに、1886年のアンケート、2つ目の質問は、1頭だけベストホースをあげる、というものですが、同じ人たちが選んでいるので、上位の顔ぶれはさすがにあまり変わりません:

1.  Gladiateur (1862)  = 11票
2.  Isonomy (1875)  = 10票
3.  West Australian (1850)  = 9票
4.  St Simon (1881)  = 8票
5.  Blair Athol (1861)  = 6票
    Virago (1851)  = 6票


 時代は一気に下って、記念すべき200回目の英国ダービーを迎える1979年、「Pace Maker」誌に「歴代ダービー馬ベスト6」というのを掲載しました。
 「Pace Maker」は、僕も1998年から 2年間ぐらい定期購読していて、100ページちょっとぐらいの月刊誌ですが、英国の競馬界ではかなり権威を持っている雑誌だと思います。
 英国ダービーの歴代優勝馬から選出されたのは以下の6頭:

  Ormonde (1883)
  Bahram (1932)
  Pinza (1950)
  Seabird (1962)
  Nijinsky (1967)
  Mill Reef (1968)

 19世紀のアンケートで最良の馬とされたGladiateurとWest Australianは、いずれも英国3冠馬なので対象に含まれているはずですが、時代の流れというべきか、選から漏れました。
 ちなみに、6頭のなかでもベストの1頭は、Gladiateurと同じフランス馬のSeabirdが推されたそうです。

 6頭のうち、Pinza以外の5頭は、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」にも選ばれています。
 また、Seabird、Nijinsky、Mill Reef の3頭は、原田俊治さんの「新・世界の名馬」に入れられています。


 以下、(2)に続く。(http://tbbird.asablo.jp/blog/2007/01/02/1087228)

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