世界の歴代最強馬(1) ― 2007-01-02 07:49:00
史上最強馬はどの馬か?
ちょっとだけでも競馬に詳しくなれば、しょせんまじめな答えが出ない問題だと理解できるはずです。
しかし、競馬ファンなぞ、答えのないクイズこそが興味津々で大得意とする人種であり、かくして古今東西、様々な最強馬論議が出されてきました。
古くは19世紀、英国の「The Sporting Times」誌が1886年6月、有名なオーナー、調教師、騎手、ジャーナリストなど約100人を対象にしたアンケートが残っています。
質問は2つ、1つ目は、19世紀の優れた競走馬ベスト10を挙げる、というもので、集計すると、以下の結果になっていたそうです:
19世紀と言っても、このアンケートが行われたのは1886年ですので、近代競馬黎明期の19世紀初頭も除けば、対象はほとんど半世紀のみ。
9位にOrmonde(オーモンド)が登場していますが、これは、まだダービーを勝つ前の現役馬でした。クラシック3冠を達成して、16勝無敗のままで引退したあとの調査なら、もっと順位があがったかも知れません。
40位タイまでの42頭中、牝馬は、7位のVirago、12位のPlaisanterie、20位のCrucifix、22位のBlin Bonny、26位のWheel of Fortune、27位のAchievement、37位のAlice Hawthorn、37位のKincsem、計8頭です。
英国で行われたアンケートなので、英国で調教していた馬がほとんどで、例外は12位のPlaisanterie(フランス)と、37位のKincsem(ハンガリー)の牝馬2頭だけです。
但し、1位に選ばれていたGladiateurも、基本的に、フランスオーナーのフランス産馬です。
このなか、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」(1994年頃選)にも選ばれているのは、1位のGladiateur、2位のWest Australian、4位のSt Simon、6位のThe Flying Dutchman、9位のOrmonde、22位のTouchstone、22位のBend Or、37位のKincsemです。
逆に山野さんに選出されて、前記アンケートのランキングに入っていないこの時代のヨーロッパ馬は、Birdcatcher(1833)と Hampton(1872) の 2頭です。
原田俊治さんの「世界の名馬」(1972年頃)、「新・世界の名馬」(1993年頃) に、選ばれているこの時代の馬は、Gladiateur、St Simon、Kincsemの3頭だけです。
「Notable English and Irish Thoroughbreds」(1984年出版)という書物がありますが、なんと、50頭のうちに、半分の25頭までが19世紀に生まれた馬を選出しています。上のアンケートの馬に含まれているのは、Gladiateur、West Australian、Isonomy、St Simon、Blair Athol、The Flying Dutchman、Virago、Stockwell、Bay Middleton、Plenipotentiary、Stockwell、Galopin、Crucifix、Touchstone、Blink Bonny、Wheel of Fortune、Priam、Velocipede、Alice Hawthornの19頭。
IsinglassやSceptreなど後に生まれた名馬もいますので、この本に選ばれてアンケートのTop40に含まれていないのは、Beeswing(1833)の1頭だけです。
ちなみに、1886年のアンケート、2つ目の質問は、1頭だけベストホースをあげる、というものですが、同じ人たちが選んでいるので、上位の顔ぶれはさすがにあまり変わりません:
時代は一気に下って、記念すべき200回目の英国ダービーを迎える1979年、「Pace Maker」誌に「歴代ダービー馬ベスト6」というのを掲載しました。
「Pace Maker」は、僕も1998年から 2年間ぐらい定期購読していて、100ページちょっとぐらいの月刊誌ですが、英国の競馬界ではかなり権威を持っている雑誌だと思います。
英国ダービーの歴代優勝馬から選出されたのは以下の6頭:
19世紀のアンケートで最良の馬とされたGladiateurとWest Australianは、いずれも英国3冠馬なので対象に含まれているはずですが、時代の流れというべきか、選から漏れました。
ちなみに、6頭のなかでもベストの1頭は、Gladiateurと同じフランス馬のSeabirdが推されたそうです。
6頭のうち、Pinza以外の5頭は、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」にも選ばれています。
また、Seabird、Nijinsky、Mill Reef の3頭は、原田俊治さんの「新・世界の名馬」に入れられています。
以下、(2)に続く。(http://tbbird.asablo.jp/blog/2007/01/02/1087228)
ちょっとだけでも競馬に詳しくなれば、しょせんまじめな答えが出ない問題だと理解できるはずです。
しかし、競馬ファンなぞ、答えのないクイズこそが興味津々で大得意とする人種であり、かくして古今東西、様々な最強馬論議が出されてきました。
古くは19世紀、英国の「The Sporting Times」誌が1886年6月、有名なオーナー、調教師、騎手、ジャーナリストなど約100人を対象にしたアンケートが残っています。
質問は2つ、1つ目は、19世紀の優れた競走馬ベスト10を挙げる、というもので、集計すると、以下の結果になっていたそうです:
1. Gladiateur (1862) = 65票 2. West Australian (1850) = 63票 3. Isonomy (1875) = 62票 4. St Simon (1881) = 53票 5. Blair Athol (1861) = 52票 6. The Flying Dutchman (1846) = 49票 7. Virago (1851) = 36票 St Gatien (1881) = 36票 9. Ormonde (1883) = 34票 10. Robert the Devil (1877) = 31票 11. Cremorne (1869) = 30票 12. Foxhall (1878) = 27票 Plaisanterie (1882) = 27票 14. Stockwell (1849) = 24票 15. Bay Middleton (1833) = 22票 16. Barcaldine (1877) = 21票 17. Thormanby (1857) = 16票 18. Plenipotentiary (1831) = 15票 19. Galopin (1872) = 14票 20. Crucifix (1837) = 13票 Teddington (1848) = 13票 22. Touchstone (1831) = 12票 Blink Bonny (1854) = 12票 Springfield (1873) = 12票 Bend Or (1877) = 12票 26. Wheel of Fortune (1876) = 11票 27. Priam (1827) = 9票 Fisherman (1853) = 9票 Achievement (1864) = 9票 30. Velocipede (1825) = 8票 Voltigeur (1847) = 8票 Blue Gown (1865) = 8票 33. Favonius (1868) = 7票 34. Surplice (1845) = 6票 Hermit (1864) = 6票 Sterling (1868) = 6票 37. Don John (1835) = 5票 Alice Hawthorn (1838) = 5票 Macgregor (1867) = 5票 Doncaster (1870) = 5票 Kincsem (1874) = 5票 Bendigo (1880) = 5票
19世紀と言っても、このアンケートが行われたのは1886年ですので、近代競馬黎明期の19世紀初頭も除けば、対象はほとんど半世紀のみ。
9位にOrmonde(オーモンド)が登場していますが、これは、まだダービーを勝つ前の現役馬でした。クラシック3冠を達成して、16勝無敗のままで引退したあとの調査なら、もっと順位があがったかも知れません。
40位タイまでの42頭中、牝馬は、7位のVirago、12位のPlaisanterie、20位のCrucifix、22位のBlin Bonny、26位のWheel of Fortune、27位のAchievement、37位のAlice Hawthorn、37位のKincsem、計8頭です。
英国で行われたアンケートなので、英国で調教していた馬がほとんどで、例外は12位のPlaisanterie(フランス)と、37位のKincsem(ハンガリー)の牝馬2頭だけです。
但し、1位に選ばれていたGladiateurも、基本的に、フランスオーナーのフランス産馬です。
このなか、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」(1994年頃選)にも選ばれているのは、1位のGladiateur、2位のWest Australian、4位のSt Simon、6位のThe Flying Dutchman、9位のOrmonde、22位のTouchstone、22位のBend Or、37位のKincsemです。
逆に山野さんに選出されて、前記アンケートのランキングに入っていないこの時代のヨーロッパ馬は、Birdcatcher(1833)と Hampton(1872) の 2頭です。
原田俊治さんの「世界の名馬」(1972年頃)、「新・世界の名馬」(1993年頃) に、選ばれているこの時代の馬は、Gladiateur、St Simon、Kincsemの3頭だけです。
「Notable English and Irish Thoroughbreds」(1984年出版)という書物がありますが、なんと、50頭のうちに、半分の25頭までが19世紀に生まれた馬を選出しています。上のアンケートの馬に含まれているのは、Gladiateur、West Australian、Isonomy、St Simon、Blair Athol、The Flying Dutchman、Virago、Stockwell、Bay Middleton、Plenipotentiary、Stockwell、Galopin、Crucifix、Touchstone、Blink Bonny、Wheel of Fortune、Priam、Velocipede、Alice Hawthornの19頭。
IsinglassやSceptreなど後に生まれた名馬もいますので、この本に選ばれてアンケートのTop40に含まれていないのは、Beeswing(1833)の1頭だけです。
ちなみに、1886年のアンケート、2つ目の質問は、1頭だけベストホースをあげる、というものですが、同じ人たちが選んでいるので、上位の顔ぶれはさすがにあまり変わりません:
1. Gladiateur (1862) = 11票 2. Isonomy (1875) = 10票 3. West Australian (1850) = 9票 4. St Simon (1881) = 8票 5. Blair Athol (1861) = 6票 Virago (1851) = 6票
時代は一気に下って、記念すべき200回目の英国ダービーを迎える1979年、「Pace Maker」誌に「歴代ダービー馬ベスト6」というのを掲載しました。
「Pace Maker」は、僕も1998年から 2年間ぐらい定期購読していて、100ページちょっとぐらいの月刊誌ですが、英国の競馬界ではかなり権威を持っている雑誌だと思います。
英国ダービーの歴代優勝馬から選出されたのは以下の6頭:
Ormonde (1883) Bahram (1932) Pinza (1950) Seabird (1962) Nijinsky (1967) Mill Reef (1968)
19世紀のアンケートで最良の馬とされたGladiateurとWest Australianは、いずれも英国3冠馬なので対象に含まれているはずですが、時代の流れというべきか、選から漏れました。
ちなみに、6頭のなかでもベストの1頭は、Gladiateurと同じフランス馬のSeabirdが推されたそうです。
6頭のうち、Pinza以外の5頭は、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」にも選ばれています。
また、Seabird、Nijinsky、Mill Reef の3頭は、原田俊治さんの「新・世界の名馬」に入れられています。
以下、(2)に続く。(http://tbbird.asablo.jp/blog/2007/01/02/1087228)
世界の歴代最強馬(2) ― 2007-01-02 16:11:51
一応、その(1) (http://tbbird.asablo.jp/blog/2007/01/02/1086731) からの続きです。
ところ変わって、アメリカでも名馬のアンケートがいろいろありました。
例えば、1973年の「Thoroughbred Record」誌の読者アンケート、トップ10は以下のような結果となっています:
なぜか、ヨーロッパでしか走っていないRobotが、320票を獲得して、8位にランクされました。
1983年の「The Blood-Horse」誌は、1933年から1982年の半世紀間の年度代表馬50頭から、ベストホースのアンケートを行いました。
「The Blood-Horse」もかつて2年間ぐらい定期購読していましたが、文句なしに現在アメリカ最もポピュラーな競馬週刊誌です。
1983年の読者アンケート、トップ15は以下の通りです:
Man O' Warは時代的に対象外となり、代わりに1970年以降活躍した馬たちが入ってきました。
もうひとつ、同じ「The Blood-Horse」誌が、そのスタッフによる、20世紀のベストホース100選というのを、1999年に掲載しました。
順位がついているので、50位までを以下に載せます:
ちなみに50頭のうち、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」にも選ばれているのは、Man O' War、Secretariat、Citation、Kelso、Count Fleet、Native Dancer、Forego、Seattle Slew、Spectacular Bid、Tom Fool、Affirmed、War Admiral、Buckpasser、Colin、Damascus、Round Table、Bold Ruler、Swaps、Equipoise、Phar Lap、Nashua、Exterminator、Sysonby、Ruffian、Gallant Man、Northern Dancer、Dahlia、なんと計27頭も。
特に25位までの馬で、山野さんに選ばれなかったのは6位のDr Fager、23位のJohn Henry、25位のSeabiscuit の3頭だけです。
一方、原田俊治さんの「世界の名馬」、「新・世界の名馬」に選ばれているのは、Man O' War、Secretariat、Citation、Kelso、Native Dancer、Seattle Slew、Affirmed、Round Table、Bold Ruler、Phar Lap、John Henry、Nashua、Ruffian、Northern Dancerの14頭です。
ところ変わって、アメリカでも名馬のアンケートがいろいろありました。
例えば、1973年の「Thoroughbred Record」誌の読者アンケート、トップ10は以下のような結果となっています:
1. Man O' War (1917) 2. Citation (1945) 3. Secretariat (1970) 4. Kelso (1957) 5. Native Dancer (1950) 6. Count Fleet (1940) 7. Buckpasser (1963) 8. Ribot (1952) 9. Dr Fager (1964) 10. Tom Fool (1949)
なぜか、ヨーロッパでしか走っていないRobotが、320票を獲得して、8位にランクされました。
1983年の「The Blood-Horse」誌は、1933年から1982年の半世紀間の年度代表馬50頭から、ベストホースのアンケートを行いました。
「The Blood-Horse」もかつて2年間ぐらい定期購読していましたが、文句なしに現在アメリカ最もポピュラーな競馬週刊誌です。
1983年の読者アンケート、トップ15は以下の通りです:
1. Secretariat (1970) 2. Kelso (1957) 3. Citation (1945) 4. Native Dancer (1950) 5. Forego (1970) 6. Seattle Slew (1974) 7. Affirmed (1975) 8. Spectacular Bid (1976) 9. Round Table (1954) 10. John Henry (1975) 11. Buckpasser (1963) 12. Swaps (1952) 13. Count Freet (1940) 14. Nashua (1952) 15. Bold Ruler (1954)
Man O' Warは時代的に対象外となり、代わりに1970年以降活躍した馬たちが入ってきました。
もうひとつ、同じ「The Blood-Horse」誌が、そのスタッフによる、20世紀のベストホース100選というのを、1999年に掲載しました。
順位がついているので、50位までを以下に載せます:
1. Man O' War 2. Secretariat 3. Citation 4. Kelso 5. Count Fleet 6. Dr Fager 7. Native Dancer 8. Forego 9. Seattle Slew 10. Spectacular Bid 11. Tom Fool 12. Affirmed 13. War Admiral 14. Buckpasser 15. Colin 16. Damascus 17. Round Table 18. Cigar 19. Bold Ruler 20. Swaps 21. Equipoise 22. Phar Lap 23. John Henry 24. Nashua 25. Seabiscuit 26. Whirlaway 27. Alydar 28. Gallant Fox 29. Exterminator 30. Sysonby 31. Sunday Silence 32. Skip Away 33. Assault 34. Easy Goer 35. Ruffian 36. Gallant Man 37. Discovery 38. Challedon 39. Armed 40. Busher 41. Stymie 42. Alysheba 43. Northern Dancer 44. Ack Ack 45. Gallorette 46. Majestic Prince 47. Coaltown 48. Personal Ensign 49. Sir Barton 50. Dahlia
ちなみに50頭のうち、山野浩一さんの「伝説の名馬100選」にも選ばれているのは、Man O' War、Secretariat、Citation、Kelso、Count Fleet、Native Dancer、Forego、Seattle Slew、Spectacular Bid、Tom Fool、Affirmed、War Admiral、Buckpasser、Colin、Damascus、Round Table、Bold Ruler、Swaps、Equipoise、Phar Lap、Nashua、Exterminator、Sysonby、Ruffian、Gallant Man、Northern Dancer、Dahlia、なんと計27頭も。
特に25位までの馬で、山野さんに選ばれなかったのは6位のDr Fager、23位のJohn Henry、25位のSeabiscuit の3頭だけです。
一方、原田俊治さんの「世界の名馬」、「新・世界の名馬」に選ばれているのは、Man O' War、Secretariat、Citation、Kelso、Native Dancer、Seattle Slew、Affirmed、Round Table、Bold Ruler、Phar Lap、John Henry、Nashua、Ruffian、Northern Dancerの14頭です。
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