【メモ】エドガー.V.ソーン、ジョルジュ・ビゴー、新橋芸者の欧州行2015-05-07 22:26:58

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 横浜居留地の外国人社会および明治の日本を風刺する漫画を描いた人といえば、まずチャールズ・ワーグマン(http://tbbird.asablo.jp/blog/2015/03/25/7597145)が有名ですが、「よこはま人物伝 ~歴史を彩った50人」(横浜開港資料館編)では、アメリカ人のエドガー.V.ソーン(Edgar Vooris Thorn)を取り上げています。

 ソーン氏は1847年の生まれで、日本に来たのは、すでに中年に入った1887年頃です。
 当初、ランプやストーブなどアメリカ製品の輸入や日本製品の輸出を行う、東京京橋にあるジャパニーズ&アメリカン貿易会社の支配人となっていました。しかし、この貿易会社は長続きせず、まもなく、ソーン氏は出版、印刷業に転身し、1889年12月頃に「ボックス・オブ・キュリオス紙」を出版することに至りました。
 「ボックス・オブ・キュリオス紙」には、ソーン編集長のほか、オーストラリア出身の画家F.A.ナンケベルがいて、日本の近代漫画の祖だと言われた北澤楽天(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%BE%A4%E6%A5%BD%E5%A4%A9)がいました。20世紀初頭、ボックス・オブ・キュリオス印刷出版社は、編集者、植字工、印刷工、製本工合わせて100人規模を抱える大きな規模になっていたそうです。

 ソーン氏は1912年マニラで客死したため、横浜山手の外国人墓地には妻、娘、息子の墓だけがあるようです。


 ワーグマンの「ジャパン・パンチ」が終刊した1887年、エドガー.V.ソーン氏の「ボックス・オブ・キュリオス紙」より数年早く、フランス人ジョルジュ・ビゴーが「トバエ」を出していました。

 ウィキペディアにジョルジュ・ビゴーの項が立てられ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%93%E3%82%B4%E3%83%BC)、教科書にその絵が掲載されたりと、現在ではエドガー.V.ソーンよりもはるかに知られています。
 ビゴー氏は1889年の「トバエ」休刊後も、1890年に「ポタン・ド・ヨコ」、1893年に「ル・ポタン」など、複数の風刺画雑誌を刊行していました。
 但し、ウィキペディアにも書かれているように、戦後、歴史学者等による再発掘がなされるまで、一時期、ビゴー氏の事績はほとんど知られていなかったようです。

 ビゴー氏は1899年に日本人の妻マスと離縁し、フランス国籍の長男を引き取ってフランスに帰国しました。
 ウィキペディアには記載されていませんが、実は、1900年には新橋からパリ万国博覧会に参加した芸者一行に同行し、通訳を務めたようです。


 この話、いま図書館から借りている「明治不可思議堂」(横田順彌、筑摩書房)に詳しく書かれて、なかなかおもしろいです。

 簡単に言えば、東京烏森の料理屋扇芳亭の女将・岩間おくに率いる芸者たち、料理人、髪結い、女中などを含めて15名ほどの一行は、興行権を購入したパノラマ社を頼ってパリに渡り、万国博覧会会場の片隅に宿泊し、会期中に舞台出演を無事につとめあげました。
 品の良い長唄などはあまりウケず、道化踊りのほうが評判良かったそうです。しかし、舞台の仕草よりもさらにおもしろいと評判になったのが、日本女性の日常生活(化粧の仕方から洗濯まで)で、興行主は物好きな客を連れてきて、こっそり覗かせたりしたそうです。

 パリ公演を終えても、やり手の女将は欲が出てきて、日本に帰る4名を除き、11人でデンマークを振り出しに、ロシア、ハンガリー、オーストリア、ドイツなどと回りました。
 ハンガリーでは芸者たちのサインが人気になったり、ドイツでは片言のドイツ語が受けたり、さらに当時ヨーロッパで流行したドイツ人女優の「ゲイシャ劇」との共同興行が当たりにあたって、い中流劇場で30日間舞台を共にしたそうです。

 一行が日本に帰国したのは1902年の正月で、なんと2年間近く渡って興行の旅を続けました。
 明治時代の女性もなかなかやるな、と感心させられました。

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