断ち切られた歌2015-05-08 23:46:16

 カール・アマデウス・ハルトマンは、第二次世界大戦後に名誉回復を受けると、すぐさまに現代音楽のシリーズ演奏会「ムジカ・ヴィーヴァ」の構想をまとめ、バイエルン放送と共同でミュンヘンで開始しました(http://de.wikipedia.org/wiki/Musica_Viva_(M%C3%BCnchen))。
 このイベントは、楽壇の大物たちを呼ぶことに成功しただけでなく、若い世代の作曲家たちにもチャンスを与えました。

 例えばルイジ・ノーノも、まずこの「ムジカ・ヴィーヴァ」で知られるようになった人だといわれています。


 ハルトマンの交響曲一番を聞いた(http://tbbird.asablo.jp/blog/2015/04/28/7622371)後、いろいろ関連作品を辿って、ノーノの「Il canto sospeso(断ち切られた歌)」に到達しました。
 この作品は、戦時下の欧州で捕らえられ、死刑を宣告された、抵抗運動の闘士たちの遺書にインスパイアされたものです。

 クラウディオ・アバド期のベルリン・フィルの演奏がYouTubeに残っています。
 オーケストラのための第一楽章は、ヴァイオリンやトランペットの超高音と、コントラバスやトロンボーンの超低音が共存し、極限状態を表現しているそうです。


 続く合唱やソプラノはよくわかりませんが、第五楽章のテノールのアリアでは、ポーランドの14歳で亡くなった少年カイムが残した文章によるものです。
 「この空が紙で、世界中の海がインクでない限り、この苦しみや、僕のまわりで起こっていることを、すべて書き尽くすことができません。」


 複雑な第六楽章を経て、第七楽章は再びソプラノと女声合唱が、ソ連の少女リューバ・シュヴェツォワの残した言葉を歌い上げます。
 「さよなら、お母さん、あなたの娘は、濡れた大地の中へ消えてゆきます。」


 セリエル技法などは私には難しくて、まったく理解していませんが、このカンタータに引き付けられている現実から、現代音楽を難解だと思って一概に敬遠する必要もない、かも知れません。

 1990年5月8日、ヨーロッパで第二次世界大戦が終わった日からちょうど45年後のその日に、ルイジ・ノーノが死去しました。
 2015年5月8日、ノーノの死から今日で、さらにちょうど25年が経ちました。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://tbbird.asablo.jp/blog/2015/05/08/7630038/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。