伝馬と、おてんば2013-06-27 23:24:39

 男勝りの活発な女の子を指す言葉に、「おてんば(お転婆)」という言い方があります。

 ウィキペディアでは、元々オランダ語ontembaarに由来する外来語説をメインに取り上げ、辞書の「大言海」もオランダ語源説を採用しています。
 「tembaar」は英語の「tamable」に相当し、「馴らすことのできる」、「馴らしやすい」と言った意味です。「on-」の接頭語を付けると意味が逆になり、「馴らすことのできない」、「手に負えない」と言った感じになるそうです。
 おてんば娘が、手に負えない「じゃじゃ馬」と形容するのと、考え方は近いかも知れません。

 しかし、「広辞苑」ではこのオランダ語源説を、かなり疑っているようです。
 「オランダ語ontembaarからの外来語とする説もあるが『お』を伴わぬ用例が多く、信じ難い。」
 各地の方言で「お」を伴わない語形が採集され、逆の意味の「tembaar」に由来するわけもないし、「広辞苑」がオランダ語源説を否定するのは一理があります。


 いまひとつ、「お伝馬」に由来する説があります。

 「伝馬」は「テンマ」と発音され、大化改新より存在する歴史ある制度です。
 「大宝令」では駅伝制について詳しく規定しており、駅の任務は、官使のために人馬を継ぎ立て、宿食を供することにありました。そのため、駅には「駅馬」を常備し、また、「伝馬」を置いて官使の便に備えていました。
 「伝馬」は飼育が行き届き、公用のみで使われるために酷使されることもなく、民間の駄賃馬と違って、いつも元気で威勢が良いらしいです。それで、「いつも元気で跳ね回ること」を「お伝馬のようだ」と言うのが、そのうち、「オテンバ」に発音が変化したのではないか、という説です。

 駅伝制が平安時代でもすでに衰微し、江戸時代から使われはじめた「おてんば」の語源にするには無理があると、「お伝馬」由来説を疑っている学者さんが説いているのを、本で読みました。

 しかし、実は古来の駅伝制は衰退した後、江戸に入って、別の形の「伝馬」が復活されていました。
 手元の「信州 馬の歴史」(信州馬事研究会編、信濃毎日新聞社出版)によれば、徳川家康が関が原の合戦に勝利したあと、軍事上の必要から幹線道路の整備に着手し、五街道を定め、宿場(宿駅)を設置しました。各宿場には一定の人足と馬が常備され、公用の人や物資の継ぎ送りに当たらせて、これを「御伝馬」(ごてんま)と呼んだそうです。

 「大宝令」の駅伝制では「伝馬」よりも「駅馬」のほうが数が多ですが、江戸初期の宿場は「御伝馬」のみ、むしろ後者が直接「おてんば」の語源に相応しいかと思いますが、どうでしょうかね。

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