暖簾と、のれん代2013-06-26 22:32:19

 企業のM&Aが日常的に発生するいまの世の中、「のれん代」という言葉もよく聞かされることになりました。
 端的に言えば、「のれん代」とは「買収価額」から「買収された企業の純資産評価額」を引いた差額です。例えば、2011年にパナソニックが三洋電機の買収を行った際に要した金額は約7000億円に達したが、そのうち「のれん代」が実に5000億円に上ります。


 「のれん」は、漢字で「暖簾」と書きますが、なかなか実物で受けた感じと合わないんですが、元は中国語です。
 「禅林象器箋」(http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/823268/37)には、「綿布覆簾面防風気、故言暖簾」とあり、夏で使う「すだれ」が「涼簾」というのと対比しているようです。

 「なうれんにこち吹く伊勢の出店かな」 (蕪村)

 のれんを分ける、というのは本来、長年勤めた奉公人が独立する時に、主人が屋号を名乗ることを許し、時には得意先をゆずってやったりすることです。
 旧主ののれんを掲げるのは、概ね以下のようなものを継承できることに、メリットがあると考えられます:
 ・ブランド・イメージ
 ・製造やサービスに関するノウハウ
 ・得意先、取引先との関係

 多くの企業の株価純資産倍率(PBR)が1倍を超えているのも、買収されるときに買収価額が純資産より高いのも、企業活動を継続したなか、上記ブランド・イメージ、ノウハウ、得意先などの価値があると、評価されたためだと思います。


 ところが、高額なのれん代を支払って企業を買収しても、予期していたほどのシナジー効果が出なければ、価値の判断ミスを認め、会計上に減損処理を行う必要が生じます。
 ここ2年でパナソニック社の大幅赤字の一部は、そののれん代の償却が占めています。