【メモ】味噌汁よりも牛肉ソップ?2012-08-07 23:19:45

 日本で最初の洋食店が開業されたのは、明治2年頃だと言われています。
 但し、「当時外国人ノ供養ヲ目的トシ本邦人ハ之ヲ嗜ムモノニアラズ」(横浜市史稿)とあるように、日本人が通うわけではなく、また、何軒かできた洋食店はいずれも長続きしなかったようです。

 明治5年の「新聞雑誌」によれば、明治天皇が肉食奨励のため、「自ら膳宰に命じて」一月二十四日に牛肉を試食した、そうです。
 「近代日本食文化年表」(小菅桂子、雄山閣)を読むと、殺生禁断令が名目上まだ残っていた時代にあって、日本が近代国家として世界に仲間入りするため、政策として、明治天皇の牛肉試食をニュースで大々的にで報じたそうです。

 天皇の率先垂範が効いたのか、明治6年、「開祖西洋料理」と号し、函館で「開成軒」が開業し、東京築地にも西洋料理店「日新亭」が開業しました。少しずつ洋食が食べられるようになりました。
 また、同年に、東京小石川の橋爪貫一氏が、東京健全社の名でスープ(ソップ)の販売を開始しました。

 「にっぽん洋食物語大全」(小菅桂子、講談社)に、この東京健全社が出した意見広告が載っていますが、なかなか大胆な内容です。
 「牛羹汁(ソップ)、一合定価三銭。都下の風習として毎日味噌汁を喫すること各家概ね然り。然るに彼の味噌は元と腐敗物より造れるものにして、大に人身に害あり......」
 だから腐敗物からできる味噌汁をやめて、健康に良い西洋のソープにしなさい、という理屈です。離乳食として、このソープでお粥を作るのも最高ですよ、とも。

 但し、明治14年、浅草の平野亭が毎朝牛肉ソップの配達を始めた記述を見ても、一般家庭よりもむしろ病院に毎日配達されたそうです。つまり、主に病人のための栄養食であって、一般家庭に浸透できなかったようです。