「芸亭」の「芸」2012-02-28 00:46:50

 わが国最古の私立図書室、もしくは最初の公開型図書館とされているのが、奈良時代後期の石上宅嗣によって設置された「芸亭院(うんていいん)」だそうです。

 ウィキペディアを調べると、平安時代初期の「続日本紀」に、宅嗣の業績とともに「芸亭」の創設経緯が転載され、その頃は「芸亭」がまだ存続していたようです。
 また、この「芸」(ウン)は、現在でも中国で使われている漢字で、日本で使われている芸術の「芸」(ゲイ)とはまったく別文字、ともあります。

 「芸」(ウン)は「くさぎる」(雑草を取る)、「ヘンルーダ」(書物の虫を防ぐのに使う香草)の意であり、「芸亭」の名はこの「ヘンルーダ」の意味からきている、とウィキペディアにあります。
 「ヘンルーダ(Common Rue)」はミカン科の植物で、この項のウィキペディアにも「漢字では芸香(うんこう)と書き、しおりに使うと、本の虫食いを防ぐ」なる記述があります。


 確かに中国も昔、書斎を「芸閣」、「芸窓」などと呼んだりするのは、目にしたことがあります。
 しかし地中海原産の「ヘンルーダ」は、はたして古代の中国にあったのでしょうか?

 「芸閣」などの「芸」は、ゲッキツ(月橘、Murraya paniculata)ではないかと、考えています。

 李時珍の「本草綱目」では、「芸,盛也,此物山野叢生甚多,而花繁春馥,故名。」と記されています。
 ゲッキツはインドの原産らしいですが、台湾に住んでいた頃もよく見かけ、南アジアでは広く生息しているようです。
 宋の時代の沈括(沈存中)が、「夢溪筆談」という著作のなかで、「古人藏書辟蠹用芸。芸,香草也,今人謂之七裏香是也。」と書いています。「月橘」はいまも「七里香」と呼ばれていますが、「七裏香」は「七里香」に通じると考えられます。

 もっとも、「ゲッキツ」も「ヘンルーダ」と同じ、やはりミカン科の植物で、大きくかけ離れているわけではなさそうです。

コメント

_ 秋葉ゑこう ― 2012-03-01 05:40:11

そう言えば、「云々」(うんぬん)なんていう言葉はよく使いますけれど、
「芸」の中にも「云」が入っていますね。「芸」を(うん)と読むのはその
あたりの流れなのでしょうか。草冠がついて(うん)という植物という方が、
「芸」の本来という感じもしますね(笑)
芸術の「芸」が違うというのは、旧字体の「藝」(←芸の旧字体)から
「埶」を面倒だからとっちゃった、ということで違うっていうことなんで
しょうか。
しかし、なんで「藝術」(←芸の旧字体と術)の「芸」には草冠が付いてい
るのでしょう。。。
もしかすると「藝」を表示しない端末ありそうなんで
「藝」(←芸の旧字体)
なんてしてます。WEBでのフォント扱いは厄介だなぁ。。。。。☆ゑ

_ T.Fujimoto ― 2012-03-05 07:55:58

ゑこうさん、おはようございます。
「芸」と「藝」は元々関連のない別々の漢字ですが、日本では「芸」を使わないので、詮索せず、「藝」を「芸」の形に略してしまったのですね。
芸術の「芸」や「藝」に草冠が付いているのはなぜでしょうかね。辞書を調べると、「植える」という意味の動詞の意味もありますので、「園芸」等を経由して、「才能、技術」を意味する名詞の「芸」になったかも知れません。

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