もうひとりの自分を贈る ― 2011-08-15 21:13:58
以下のホームページの写真を見てください。
<http://www.anomalies-unlimited.com/Death/Masakichi.html>
「Which is the real Masakichi?」というタイトルですが、日本のテレビにも登場したことがあるので、記憶している方もいるかと思います。正解を明かせば、右側がこの政吉という人の写真で、左側にあるのは本人と瓜二つに製作された活人形マサキチの写真だそうです。
この人形は、「Believe It or Not!」で知られるロバート・ルロイ・リプレー(Robert LeRoy Ripley)の、膨大なコレクションのなかのひとつです。
旅が大好きで、現地で見つけた珍奇なものを大量に集めていたリプレー氏は、世界を18周ぐらいまわり、198カ国を踏破したそうですが、関東大震災が発生した直後の1925年に日本を訪れ、そのときアメリカに持ち帰った土産の1つが、このマサキチでした。
前記のページを見ると、この活人形は1885年(明治18年)に作られたもののようです。
経緯ですが、荒俣弘の著作(「荒俣弘の20世紀世界ミステリー遺産」)の記述によれば、モデルの花沼政吉はある日、医者から不治の病だと診断されました。余命がいくばくもないと引導を渡されて悲しむ政吉は、自分を忘れないために、自身にそっくりな人形を作らせ、恋人に渡そうと考えました。
それも普通の人形ではなく、松本喜三郎や安本亀八が作っているような精密な活人形です。しかも髪も、歯も、なんと全部自分のものを抜いて植え込んで拵えたとか、まさに奇怪な分身でした。
死者の思い出として保存するため、あるいは肖像画を描くための資料として用いるため、死の直前か直後、石膏や蝋で死者の顔の型を取ったものをデスマスクだと言いますが、マサキチは、言ってみれば、その全身バージョンです。
あまりのリアルさが不気味で、ドッペルゲンガーやオートスコピーとか、ドストエフスキーの「分身」あたりも思い出してしまいました。
残念ながら、1996年のカリフォルニア大地震の際に大きな損傷を受けてしまいましたが、それまでこの人形は、例の「Believe It or Not!博物館」で長年展示されたそうです。
実は、不治の病を宣告された政吉さんは、人形ができた後も病状が悪化するなく、快癒してしまいました。
恐らくは、医師の誤診だったのでしょう。
ということで、分身の人形と合わせて、ふたりのマサキチが世に存在することになりました。なにしろ本物の歯を持っているのは人形のほうで、生きているほうの花沼政吉よりも本物ぽいかも知れません。
「分身」(ドストエフスキー)のなかのゴリャートキンは、瓜二つの分身から逃れようと、上司の令嬢と駆け落ちをするために彼女の家の中庭に潜んだが、すぐに見つかり、精神病院送りになってしまいました。
「捜神後記」のなか、宋の時代に、自分の分身を見てしまった男が出てきますが、やはり後に病気になり、頭が狂ってしまったそうです。
こういう特異な経験をしてしまった者は、無事に一生を終えるのはなかなか難しいようです。
まあ、本人は無事でも、このかなり奇怪で若干気味の悪いプレゼントを貰って、恋人のほうは喜ぶのでしょうか?
<http://www.anomalies-unlimited.com/Death/Masakichi.html>
「Which is the real Masakichi?」というタイトルですが、日本のテレビにも登場したことがあるので、記憶している方もいるかと思います。正解を明かせば、右側がこの政吉という人の写真で、左側にあるのは本人と瓜二つに製作された活人形マサキチの写真だそうです。
この人形は、「Believe It or Not!」で知られるロバート・ルロイ・リプレー(Robert LeRoy Ripley)の、膨大なコレクションのなかのひとつです。
旅が大好きで、現地で見つけた珍奇なものを大量に集めていたリプレー氏は、世界を18周ぐらいまわり、198カ国を踏破したそうですが、関東大震災が発生した直後の1925年に日本を訪れ、そのときアメリカに持ち帰った土産の1つが、このマサキチでした。
前記のページを見ると、この活人形は1885年(明治18年)に作られたもののようです。
経緯ですが、荒俣弘の著作(「荒俣弘の20世紀世界ミステリー遺産」)の記述によれば、モデルの花沼政吉はある日、医者から不治の病だと診断されました。余命がいくばくもないと引導を渡されて悲しむ政吉は、自分を忘れないために、自身にそっくりな人形を作らせ、恋人に渡そうと考えました。
それも普通の人形ではなく、松本喜三郎や安本亀八が作っているような精密な活人形です。しかも髪も、歯も、なんと全部自分のものを抜いて植え込んで拵えたとか、まさに奇怪な分身でした。
死者の思い出として保存するため、あるいは肖像画を描くための資料として用いるため、死の直前か直後、石膏や蝋で死者の顔の型を取ったものをデスマスクだと言いますが、マサキチは、言ってみれば、その全身バージョンです。
あまりのリアルさが不気味で、ドッペルゲンガーやオートスコピーとか、ドストエフスキーの「分身」あたりも思い出してしまいました。
残念ながら、1996年のカリフォルニア大地震の際に大きな損傷を受けてしまいましたが、それまでこの人形は、例の「Believe It or Not!博物館」で長年展示されたそうです。
実は、不治の病を宣告された政吉さんは、人形ができた後も病状が悪化するなく、快癒してしまいました。
恐らくは、医師の誤診だったのでしょう。
ということで、分身の人形と合わせて、ふたりのマサキチが世に存在することになりました。なにしろ本物の歯を持っているのは人形のほうで、生きているほうの花沼政吉よりも本物ぽいかも知れません。
「分身」(ドストエフスキー)のなかのゴリャートキンは、瓜二つの分身から逃れようと、上司の令嬢と駆け落ちをするために彼女の家の中庭に潜んだが、すぐに見つかり、精神病院送りになってしまいました。
「捜神後記」のなか、宋の時代に、自分の分身を見てしまった男が出てきますが、やはり後に病気になり、頭が狂ってしまったそうです。
こういう特異な経験をしてしまった者は、無事に一生を終えるのはなかなか難しいようです。
まあ、本人は無事でも、このかなり奇怪で若干気味の悪いプレゼントを貰って、恋人のほうは喜ぶのでしょうか?
コメント
_ 蓮 ― 2011-08-23 08:07:25
政吉さん、おそらく片思いだったのでしょうね。自分にも、恋人にも。
_ T.Fujimoto ― 2011-08-23 21:22:24
蓮さん、なるほど、元々嫌われていたのですね。
しかし自分にも片思い、というのはなんでしょうか(笑)
しかし自分にも片思い、というのはなんでしょうか(笑)
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://tbbird.asablo.jp/blog/2011/08/15/6047242/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
最近のコメント