【雑談】変化する言語(1) ~蟻塚の建造2008-01-11 00:28:18

.
 オーストラリアやアフリカの乾燥地帯にあるシロアリの蟻塚は、彼らの個体からみると、実に巨大にして精巧な建造物です。(↓)
http://www.geocities.jp/tentvcam/2003-05-shiroari/arituka.htm

 ライアル・ワトソン博士もその著作で取り上げています(*1)が、それによれば、昆虫学者はこのシロアリの偉業を、「ダイナミック・プログラミング」というコンピュータ用語で説明しているそうです。
 シロアリの頭脳から考えても、全体のプランを掌握している監督物が存在しないのは自明で、ひとつの作業が終わった段階で次の作業が決まり、積み重ねられた小さな行動が大きな変化に変わる「乗数効果」の結果、巨大な構造物が積み重ねられていきます。

 アリの死亡率は毎日数パーセントにのぼり、1ヶ月ぐらいでひと世代のアリはほぼ死んでしまいます。
 しかし蟻塚の建設は数十年もしくは百年以上も続き、個体の命から見れば、工程の始まりはほとんど原始時代だと言えましょう。


 ルイス・トーマス博士の著書(但し中国語訳)が手元にあります(*2)が、彼がいうには、アリたちのこのような壮大な活動に、人類が匹敵できるのはただ1つ。
 それが「言語」だそうです。

 ほとんどの自然言語において、その始まりを我々は明確に知りません。
 言語が絶えず変化していますが、誰かひとりのプランによって設計されたわけではなく、結果として、いまの形になっています。
 この先がどう変わるか、たぶんだれもはっきりと示すことはできません。
 人知で捉えられない自然現象ではなく、明らかにその言語を使っているひとりひとりが、自ら作り上げているものにもかかわらず、です。


 「英語で書くのは砂浜に文字を書くようなもので、時という波が来るとすべてを消し去ってしまう。」
 ラテン語こそが後代まで永遠に伝わる言語だと嘯いたのは、つい数百年前の英国人詩人でした。

 1362年、英国議会が英語で開会を宣言し、「the statute of pleading」という法律を制定し、法廷の使用言語を英語にすると決めたときでさえ、まだ法廷記録はラテン語で行うことが定められていました。(*3)

 それがどうなったのでしょうか?
 今日、英語は世界共通語に近い地位を得て、ラテン語を理解できる人はほんの一握りになってしまいました。


(*1) 「スーパーネイチャーII」 ライアル・ワトソン著、内田美恵/中野恵津子訳、日本教文社
(*2) 「一個細胞的生命」 Luwis Thomas著、蔡美玲訳、自華書店
(*3) 「英語の語源物語」 今井智晃著、丸善ライブラリー

コメント

_ 花うさぎ ― 2008-01-11 09:15:32

アリの話おもしろいですね。

>蟻塚の建設は数十年もしくは百年以上も続き

何だか、サグラダファミリアみたいだなと思いました。

子供にせがまれてハムスターを飼っていたことがありましたが、春に生まれたハムスターが、生まれて初めて迎える秋に、冬に備えて食べ物を蓄え始めるのはフシギでした。どうして冬に食べ物がなくなると分かっているのでしょうね。(実際に飼われている限りは食べ物がなくなる心配はありませんが)

>アリたちのこのような壮大な活動に、人類が匹敵できるのはただ1つ。
 それが「言語」だそうです

そうかもしれません。でも、最近の日本では言葉が退化していっているような気がしますよね。

_ T.Fujimoto ― 2008-01-12 02:04:18

花うさぎさん、こんばんは。
何を隠そう、僕も書きながら聖家族教会を思い出しました。

それと、確かに最近の日本語は退化しているかも知れません。
少なくとも、進化なのか退化なのか、僕にはよくわからないので、「進化する言語」というタイトルを、アップ直前に「変化」に書き換えました。
ちょっと変なタイトルになってしまったのですが、まあ、許してください。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://tbbird.asablo.jp/blog/2008/01/11/2555072/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。