【雑談】変化する言語(3) ~土から生まれ、世界を作る2008-01-15 23:33:39

 人間は土から生まれています。
 その証拠に、旧約聖書には「主な神は、土の塵で人の形を作り」(創世紀)とあります。
 「世界の神話伝説」(*1)によれば、アフリカ神話にも、人間は「神が泥を捏ねて作った」伝承があるそうです。

 一方で、ヨハネの福音書に、「初めに言葉ありき。言葉は神とともにあった。言葉は神であった。」とも書かれています。
 言葉を使うことで、人間は抽象的に物事を考えることができるようになり、また、ほかの個体と、より複雑なコミュニケーションを取ることができ、人類世界はこのように発展してきたと言われています。


 世界の言語は数十の語族に分けられ、シナ・チベット語族を上回って、言語人口が世界最大を誇るのが、インド・ヨーロッパ語族だそうです。
 インド・ヨーロッパ語族の分布は実に広く、ヨーロッパから西南アジア、さらに南北アメリカにオーストラリアなど、本当に共通な印欧祖語が源か、疑いたくなるほどです。

 疑いたくなると言いますが、一応言語学者はそうだと言い切っているので、たぶんそうなのでしょう。


 その印欧祖語に「dhghem」という言葉があって、意味は「土」です。
 ゲルマン語では「guman」に、古英語では「gumen」に、ラテン語では「homo」と「humanus」になっていました。
 そして現代の英語はそこから、「人間」を意味する「human」と、「腐植土」を意味する「humus」の二語を得ています。

 印欧祖語で「人」を意味する「man」は、現代英語の「man」となり、ほとんど意味も変化していません。
 印欧祖語の、もうひとつ「人」を意味する言葉「wiros」は、「man」と違って、さまざまな変化を辿り、ゲルマン語では「weraldh」に、古英語では「weorold」になって、最後、驚くべき事に、「world」(世界)という言葉に変わったそうです。


 かくして、人間は土から生まれ、世界になった、とのことです。


(*1) 「世界の神話伝説」 自由国民社