【馬関係の本】「名馬の生産」 エイブラム・S・ヒューイット2008-01-06 22:27:52

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 正式には「名馬の生産 ~世界の名生産者とその方式」というタイトルで、アメリカ人のAbram S.Hewittが書き、佐藤正人が和訳した、500ページを越える大作です。

 英文の原書は1982年に完成していましたが、和訳のほうは、サラブレッド血統センターより、1985年1月にその初版が出されたものです。


 訳者のあとがきに、佐藤さんは以下の話を書いています:
 「おそらく採算ベースにはのらないのではないかという話を(サラブレッド血統センターの)白井さんにしましたが、白井さんは損するかも知れないが、この本によって日本のサラブレッド生産界にすこしでも貢献できるならば、それでよいではないかと言われるのです。」

 僕がこの本を購入したの1996年、その年に4刷版が出ていたようです。
 出版部数はわかりませんが、時間をかけて、そこそこ売れてはいる、かも知れません。

 もちろん、少々堅い内容も含まれており、大衆受けする著作にはさすがにならないですが、サラブレッドとサラブレッドの生産に興味がある人なら、かなり面白く読めるはずです。
 少なくともいま読み直しても、古くささはほとんど感じません。
 むしろ、著者の深い知識と経験に基づく生産理論に触れられるばかりでなく、競馬の歴史を別の側面から捉えることまでもが可能となる、楽しい一冊です。


 本書は27章からなり、ウッドバーン牧場のアレクサンダー家から、かのフェデリコ・テシオまで、サラブレッド史に大きな影響力を及ぼしたり、大きな成功を勝ち取ったりする名生産者27人(or組)を取り上げています。

 物語的にまとめられている部分に簡潔な評論を加え、そして各章末には、その生産者の主な生産馬を、血統と簡単な競走成績込みで列挙しています。

 列挙されている馬たちをよく見ると、各生産者のポリシーが覗けるぐらい、特徴がよく出ている場合があります。
 近親配合を重ねて走る血統の定着を図る人や、自家生産の種牡馬を重視して配合の基本に置く人。ある牝系に惚れ込んで身動きならなくなるのは愚の骨頂だと言い切っている、テシオのような人もいて、本当にぞれぞれ理論は異なるようです。

 しかし言えているのは、成功を収めたこの生産者たちは、誰もが自らの理論に信念に持ち、しかも、それを強靱な意志と実行力で具現化しているように見えます。
 競馬の世界にはいうまでもなく、運が介在します。しかし、偶然のみに頼って長く成功し続ける例は見あたりません。
 歴史に残る輝かしい成果を挙げ続けるためには、ただのラッキー以上のなにかが必要かと思われます。

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