【読後感】「赤い薔薇ソースの伝説」ラウラ・エスキヴェル著、西村英一郎訳2007-03-02 00:48:32

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 メキシコで大ヒットした映画の原作本です。
 1992年の東京映画祭で主演女優賞などを取り、ビデオも出ていたので知っている人も多いかも知れません。

 僕は、映画の存在は知っていたが、本編は未見です。予告編だけは見たような気がします。
 本のほうは、例によって古本屋で求めたものです。
 作者のラウラ・エスキヴェルがこの処女小説を完成させる前は、元々脚本家だったので、本人が脚本化したら誰から文句は付けられまいが、先に原作を読んだら、この話をどうやって映像化するかが不思議になってしまうぐらいです。

 それぐらい、この作品は複雑すぎるように見えました。

 まず、その章節立て。1月から12月という全12章、それぞれメキシコ料理の名前が付けられています。例えば、「7月 牛の尻尾のシチュー」や「10月 クリームのトリッハス」のように。
 そして、各章はその料理の作り方から始まり、そこからうまく物語のほうに繋げています。

 訳者があとがきで述べているように、「風と共に去りぬ」の影響がいくらか見受けられます。「風と共に去りぬ」の南北戦争に対して、本書はメキシコ革命(1910年~1917年)という大時代を背景に、古い家に生きる女性に、その焦点を当てました。

 しかし、ただの焼き直しではないのも明らかです。
 料理のレシピだけでなく、物語に登場するモルカヘーテやメターテのような小道具(http://www.mexicozakka.com/otro/grande/d76.htm)、台所に生きる主人公・ティタ嬢の情熱を内に秘めた性格、そして作者の筆がすべたのでは、とさえ思ってしまう、ほとんど前触れもなく起きてしまう不思議な出来事も、メキシコならありえるじゃないかと思えてしまうものです。

 もちろん本当のメキシコは知らないですが、サボテンとトルティーヤ、エスパニッシュとインディオ、そのようなメキシコらしい雰囲気が感じられました。た。