スズキ・カバトとセレス小林2007-02-27 00:09:21

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 日刊スポーツのホームページを眺めていたら、元ボクシング日本フライ級王者スズキ・カバトさんの死去を伝える記事が目に飛び込みました。
http://www.nikkansports.com/battle/p-bt-tp0-20070226-162219.html


 スズキ・カバトは日本でのリングネーム、本名はノリト・カバトという、フィリピンの方です。
 カバトさんは、新日本大阪ジムという、あまり大きくない関西のジムに所属していました。華麗なテクニックやセンスはあまり感じられませんが、粘り強いファイトと重いカウンターは、当時ボクシングをよく見ていた僕には、違う意味で印象深いものでした。

 世界チャンピオンになる前の徳山昌守(洪昌守)とは2戦して1勝1分。もうひとり、後に世界王者になったセレス・小林とも、日本タイトルを賭けて3回闘いました。

 1回目は負傷判定による引き分けでした。
 そのあとの2回目、僕は後楽園ホールで見ました。(うえの写真はそのときに撮ったものです)。
 セレス・小林には会社(セレスというのは会社名だったと思います)あげての大応援団から凄まじい声援が送られ、それに対して、関西のジムから遠征して来たフィリピン人のチャンピオンには、ほとんど声援がなかったと記憶しています。
 それでもスズキ・カバトは粘り強く、黙々と打ち返していました。
 セレス・小林のほうも、元々地味なボクシングスタイルなので、この一戦はフルラウンド闘っても、熱戦とはとても言い難い内容でした。
 というより、のちにボクシング雑誌で「質の低いタイトルマッチはファン離れを招く」と投書されたほど、最初から最後まで山場もなく、極めて低調なファイトにも見えます。
 確かに見た目はそうかも知れませんが、僕には、ふたりの戦いに「必死さ」が見えました。

 畑山選手のようなセンス、辰吉選手のようなスピードがあれば、もっと華のある試合もできたのでしょう。
 平凡(失礼!)なセンスでも、持っているすべての力を振り絞って、頑張り続ければ、花は開きます。

 セレス・小林の試合は、そのあと、もう1回だけ生(やはり後楽園)で見ましたが、そのときも格下の相手に苦戦していました。
 スズキ・カバトへの再挑戦は、前回と同じく僅差で、実に微妙な判定になって、今度レフリーは小林選手の手を挙げました。
 そのあと、化けました。

 天才ではない日本チャンピオンに、わずか3戦のキャリアで最短戴冠記録を狙う天才的なホープ・石原選手が挑戦しました。
 この闘いはテレビで見ましたが、ちょっとびっくりしました。バネの利いた若い相手の強そうなパンチを、1つずつブロックして、コツコツとカウンターやボディ攻撃を決めるセレスがいました。
 そして、やがて世界王者まで上り詰めたのであります。


 スズキ・カバト選手のほうは、所詮日本では「ガイジン」だし、所属ジムもあまり有力どころではないので、ついに世界への扉は開かれませんでした。が、日本王座を6度防衛した記録と、後の世界王者に対して一歩も引かなかったファイトは、とても立派なものでした。

 故人の冥福を祈りたいと思います。