馬の家畜化の始まり2015-11-18 21:23:51

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 "Just So Stories"は、日本では「なぜなぜ物語」と訳されていますが、イギリスのノーベル賞作家ラドヤード・キップリング(Rudyard Kipling)が書き、1902年に出版された、子供のための童話集です。

 「How the Whale Got His Throat」、「How the Camel Got His Hump」など13篇の話のなかでも、もっとも長いのが「The Cat That Walked by Himself 」(http://www.boop.org/jan/justso/cat.htm)です。このなか、野生馬が、急に人間の仲間になったくだりが、以下に如くです。

 When the Man and the Dog came back from hunting, the Man said, 'What is Wild Horse doing here?' And the Woman said, 'His name is not Wild Horse any more, but the First Servant, because he will carry us from place to place for always and always and always. Ride on his back when you go hunting.

 「ワイルド・ホースがここに何をしているのか?」、犬と狩りから帰ってきた男が聞くと、女は言った、「彼はもうワイルド・ホースではなく、召使頭になったのよ。なぜなら彼はいつもいつも私たちをあちこちに運んでくれる。猟に行くとき、彼の背中に乗って。」


 実際のところは、どうだったのでしょうか?
 馬・ロバの家畜化は約6000年も前から始められたと、考古学者は考えています。

 ウマ科の動物は、後氷河時代末期に巨大な群れをなし、草原ステップ地帯全域に広がり、そして急激に増加する人類の集団にとっては、狩りの対象でした。
 すると、どうしても気になるのは、人類はいつ、何をきっかけに馬の家畜化に成功したか、という問題です。その前に少なくとも何千年間も渡って、せいぜい食糧としてしかしていなかったのに、です。

 これにはいろいろな説があります。
 馬を最初に家畜化に成功した英雄は、実はペットを欲しがっていた少年だったのではないか、という、アメリカの古生物学者ジョージ・G・シンプソン(George Gaylord Simpson)の説が、私には魅力的です。

 「その少年は、役に立たない動物を連れまわって、おそらくまず父親に叱られたのであろう」、とも。

コメント

_ 二胡ちゃん ― 2015-11-19 19:28:51

うふ、「役に立たない動物を連れまわって…」ですか。
騎乗して戦いに用いるようになったのは、いつごろからでしょうか?

ところで「ロバ」ですが、中国では仙人がのっているし、物語にも沢山登場するし(「板橋三娘子」など)お馴染みなのですが、日本ではほとんど普及せず、家畜史の謎の一つ、と聞いたことがあるんですが?? 動物園でも見ないなあ~

_ T.Fujimoto ― 2015-11-23 16:36:11

二胡ちゃんさん、こんにちは。
家畜化したのは馬より牛のほうが先だと言われて、牛に倣って、馬も当初は馬車を引くのに、もしくは馬耕の農具を引くのに使われたような気がします。戦にしてもローマの戦車のようなものがあって、騎馬の普及には、鞍や鐙などの発明を待つ必要があったのかも知れません。
世界の大型動物が棲息可能な地域のほとんどで生き延びることができるウマに対し、砂漠に起源を持つ本来のロバには、特定な生存条件が必要、だと言ったのはJ・クラットン・ブロック氏です。そういう条件が関係するかも知れません。それに走るときの後肢の上下度ゆえ、スピードを出して騎乗するのに適さない動物です。粗食でよく重労働に耐えられるところに利点があるが、日本の在来馬は近い同じ役割を担えたから、かも知れません、

_ T.Fujimoto ― 2015-11-23 16:36:59

ところで、「板橋三娘子」はわかりませんが、有名な民話ですか?

_ 二胡ちゃん ― 2015-11-23 18:41:59

こんにちは! 丁寧な解説ありがとうございます。
ロバは砂漠が起源なんですね。確かに日本の在来馬は、姿もロバに近いかな?

「板橋三娘子」は唐代伝奇小説で、板橋で宿屋を営む三娘子が術を使って旅人をロバに変え、売っては儲けていたのですが、ある客に秘密を見られ、逆に罠にはまって自分がロバに変えられる、という話なんです。この術が面白いんです。
小さな木の人形に命を吹き込んで、あっという間に蕎麦を作らせ、粉にひかせ焼餅を作り、それを食べるとロバに変身…という術なんです。
もとはインドの話やアランビアンナイトから来ているようですが、日本でも水木しげるの漫画や、平岩弓枝の小説にも影響を与えています。最近だと、台湾の蔡依林のMVに出てきて吃驚!(「Im not yours」)子供のころに、この話を読んで(世界童話集??)中国のお話に興味を持つようになったんです。 あはは、語ってしまった!

_ T.Fujimoto ― 2015-11-28 09:49:49

二胡ちゃんさん、おはようございます。
書かれたコメントを読みながら、「板橋三娘子」はどこかで聞き、もしくはどこかで読んだ記憶がよみがえってきました。
そうですか、もとはインドやアランビアンナイトの話なのですね。東西の説話は伝承の流れや比較は、興味があるジャンルなので、時間があれば調べてみないと思います。
教えていただき、ありがとうございました。

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