「悲情城市」2015-08-16 13:44:55

 侯孝賢監督の台湾映画「悲情城市」は、228事件が公に語られることさえほとんどなかった1989年に、あえてタブーにも挑んだ有名な作品です。
 それをいまさらながら、tudou.com で見ました。

 この映画は、基隆に住む林さん一家の物語です。彼らが口にするのは主に台湾語であり、日本語も飛び交います。妻を亡くした老人男性、その跡継ぎの恰幅よい長男、大陸で日本軍の通訳をしていた三男、耳の聞こえない写真技師の四男、および彼らのまわりの人々の日常が描かれています。

 話の始まりは、1945年8月15日であり、冒頭にまず聞こえてくるのが太平洋戦争の終結を報じる、いわゆる玉音放送でした。
 つい先日に初めて知りましたが、実はアメリカではその前日に日本の無条件投降が報道され、戦勝と平和の到来に人々が沸きあがっていたようです。
 が、日本人には、やはり8月15日が第二次世界大戦が終了した日であり、そして台湾にもその日に、あの放送が流れていたのです。

 「悲情城市」では、最後まで次男は登場しません。彼は軍医として戦地に行ったまま行方不明となっている設定です。少なからぬ台湾の人々は軍人や軍属としてかの戦争の犠牲になっていました。

コメント

_ 二胡ちゃん ― 2015-08-26 20:49:36

偶然「悲情城市」が手元にあり、確か前に観た覚えがあるのですが、改めて今日観ました。2時間半ぐらいですか、でも全く長く感じませんでした。監督もインタビューで、戒厳令が解除されなければ公開されなかった、と語っていますが、この重い内容を真正面から撮っていることを再確認しました。

今youtubeで、「春梅」という台湾のドラマを観ているところです。「悲情城市」の前の時代、日本統治時代の台南が舞台。台湾版「おしん」と言われているようで、言葉も台湾語と日本語です。それほど重い感じではないのですが、公平な目で時代を描いています。
日本の映画はどうなんだろう? 公平な目で近代を描けているのだろうか、と思ってしまいます。

_ T.Fujimoto ― 2015-08-31 12:44:52

二胡ちゃんさん、こんにちは。
「春梅」は知らなかったのですが、テレビドラマですね?日本語と台湾語を入り交じったドラマは、私が台湾に住んでいた頃では、あり得なかった表現形態です。つまり、事実を有りのままで描けなかったのです。
時代が進み、より公平な目線で過去を振り返れるのは、良いことだと思います。

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