離合詩 ~漢字の算数 ― 2015-07-12 08:33:14
テレビ番組の「ミラクルナイン」に、「バラバラ漢字」という種類のパズルが時々出てきますが、あれは割りと得意です。
漢字は様々なパーツに分けて見ることができます。昔の人はその特徴をとらえ、漢字の分解と合成を詩にして遊んでいました。かつて、ここで紹介していた石川丈山の「大筍五本」(http://tbbird.asablo.jp/blog/2011/05/07/5850125)も、こういう「離合詩」と呼ばれる漢字遊びの一例です。
二人相連欠其一 ( 二 + 人 - 一 = 大 )
旬日竹友消日彩 ( 旬 + 日 + 竹 - 日 = 筍 )
欲語無口亦無言 ( 語 - 口 - 言 = 五 )
全躰忘身何有待 ( 躰 - 身 = 本 )
日本では古来より、このような漢字遊びは好まれているようです。
池田正式の「堀川百首題狂歌合」に、「蘭」の題名で、「草葺きに門を構へて西側の向かひに秋の花ぞかをれる」の歌があります。西側の向かいは東であり、「東+門+草冠」から、この秋の花は「蘭」であることを示しています。
中世のなぞなぞ集「なそたて」(永正13年=1516年)に、「嵐は山を去って、軒のへんにあり」、「廿人木にのぼる」や「梅の木を水にたてかえよ」などの謎々が掲載され、「嵐-山=風」、「廿+人+木=茶」や「梅-木+水=海」と言った漢字の算術になっています。
中国は宋代、葉夢得の「石林歌話」にも離合詩の例を挙げていますが、これは相当複雑なものになります。
『古詩有離合體,近人多不解。此體始於孔北海,余讀《文類》,得北海四言一篇云:「漁公屈節,水潛匿方,與時進止,出寺弛張。呂公磯釣,闔口渭旁,九域有聖,無土不王。好是正直,女回于匡,海外有截,隼逝鷹揚。六翮將奮,羽儀未彰,龍蛇之蟄,俾也可忘。玟琁隱曜,美玉韜光。無名無譽,放言深藏,按轡安行,誰謂路長。」此篇離合「魯國孔融文舉」六字。』
すなわち、以下のような算法で、魯國の孔融(字は文舉)を指すことになるようです。
漁公屈節 水潛匿方 與時進止 出寺弛張 (漁-水+時-寺= 魯)
呂公磯釣 闔口渭旁 九域有聖 無土不王 (呂-口+域-土= 国)
好是正直 女回于匡 海外有截 隼逝鷹揚 (好-女+截-隹-十-’-ノ= 孔)
六翮將奮 羽儀未彰 龍蛇之蟄 俾也可忘 (翮-羽+蛇-它= 融)
玟琁隱曜 美玉韜光 (玟-玉= 文)
無名無譽 放言深藏 按轡安行 誰謂路長 (譽-言+按-安= 舉)
「鷹揚」が「’」と「ノ」を示すところなど、難解なのかも知れません。
漢字は様々なパーツに分けて見ることができます。昔の人はその特徴をとらえ、漢字の分解と合成を詩にして遊んでいました。かつて、ここで紹介していた石川丈山の「大筍五本」(http://tbbird.asablo.jp/blog/2011/05/07/5850125)も、こういう「離合詩」と呼ばれる漢字遊びの一例です。
二人相連欠其一 ( 二 + 人 - 一 = 大 )
旬日竹友消日彩 ( 旬 + 日 + 竹 - 日 = 筍 )
欲語無口亦無言 ( 語 - 口 - 言 = 五 )
全躰忘身何有待 ( 躰 - 身 = 本 )
日本では古来より、このような漢字遊びは好まれているようです。
池田正式の「堀川百首題狂歌合」に、「蘭」の題名で、「草葺きに門を構へて西側の向かひに秋の花ぞかをれる」の歌があります。西側の向かいは東であり、「東+門+草冠」から、この秋の花は「蘭」であることを示しています。
中世のなぞなぞ集「なそたて」(永正13年=1516年)に、「嵐は山を去って、軒のへんにあり」、「廿人木にのぼる」や「梅の木を水にたてかえよ」などの謎々が掲載され、「嵐-山=風」、「廿+人+木=茶」や「梅-木+水=海」と言った漢字の算術になっています。
中国は宋代、葉夢得の「石林歌話」にも離合詩の例を挙げていますが、これは相当複雑なものになります。
『古詩有離合體,近人多不解。此體始於孔北海,余讀《文類》,得北海四言一篇云:「漁公屈節,水潛匿方,與時進止,出寺弛張。呂公磯釣,闔口渭旁,九域有聖,無土不王。好是正直,女回于匡,海外有截,隼逝鷹揚。六翮將奮,羽儀未彰,龍蛇之蟄,俾也可忘。玟琁隱曜,美玉韜光。無名無譽,放言深藏,按轡安行,誰謂路長。」此篇離合「魯國孔融文舉」六字。』
すなわち、以下のような算法で、魯國の孔融(字は文舉)を指すことになるようです。
漁公屈節 水潛匿方 與時進止 出寺弛張 (漁-水+時-寺= 魯)
呂公磯釣 闔口渭旁 九域有聖 無土不王 (呂-口+域-土= 国)
好是正直 女回于匡 海外有截 隼逝鷹揚 (好-女+截-隹-十-’-ノ= 孔)
六翮將奮 羽儀未彰 龍蛇之蟄 俾也可忘 (翮-羽+蛇-它= 融)
玟琁隱曜 美玉韜光 (玟-玉= 文)
無名無譽 放言深藏 按轡安行 誰謂路長 (譽-言+按-安= 舉)
「鷹揚」が「’」と「ノ」を示すところなど、難解なのかも知れません。
蔵頭廻文借字詩 ~漢字の魔法陣 ― 2015-07-22 20:41:27
以下、「錦纏枝」という「藏頭廻文借字詩」を写してきました。
「笑苑千金」の巻の三、もしくは「事林廣記」の巻の七に掲載されているものです。
+-------+
|巒秀聳岩飛澗水|
|翠閑吟恣取歡邊|
|近待歸興酒宴松|
|居客來残闌聚竹|
|深邀喜席終陪檜|
|處親室浄窗寒宜|
|好音清玉漱泉○|
+-------+
ヒントとして、「寒字藏頭 左右貫串 借韻読之 自然流転」の注釈が書かれています。
さて、正しい読み方は、以下の通りだそうです:
寒泉漱玉清音好
好處深居近翠巒
巒秀聳岩飛澗水
水邊松竹檜宜寒
寒窗浄室親邀客
客待閑吟恣取歡
歡宴聚陪終席喜
喜來歸興酒闌残
「藏頭」の意味は簡単で、ヒントの通り、頭の「寒」が隠れているだけです。
「廻文」とあるのは、周りのほうから中心へと、くるくると廻って読んでいく意味です。
「借字」のほうは、句末の一文字が、次の句の頭に来ることを表しています。
押韻の知識に長けた当時文人なら、ヒントから、上記の解釈にたどり着くのは、それほど難しくないかも知れません。
「笑苑千金」の巻の三、もしくは「事林廣記」の巻の七に掲載されているものです。
+-------+
|巒秀聳岩飛澗水|
|翠閑吟恣取歡邊|
|近待歸興酒宴松|
|居客來残闌聚竹|
|深邀喜席終陪檜|
|處親室浄窗寒宜|
|好音清玉漱泉○|
+-------+
ヒントとして、「寒字藏頭 左右貫串 借韻読之 自然流転」の注釈が書かれています。
さて、正しい読み方は、以下の通りだそうです:
寒泉漱玉清音好
好處深居近翠巒
巒秀聳岩飛澗水
水邊松竹檜宜寒
寒窗浄室親邀客
客待閑吟恣取歡
歡宴聚陪終席喜
喜來歸興酒闌残
「藏頭」の意味は簡単で、ヒントの通り、頭の「寒」が隠れているだけです。
「廻文」とあるのは、周りのほうから中心へと、くるくると廻って読んでいく意味です。
「借字」のほうは、句末の一文字が、次の句の頭に来ることを表しています。
押韻の知識に長けた当時文人なら、ヒントから、上記の解釈にたどり着くのは、それほど難しくないかも知れません。
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