【馬関係の本】「折々の馬たち」 (古井由吉)2009-01-31 00:31:14

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 古井由吉さんと言えば、芥川賞も谷崎潤一郎賞も日本文学大賞も受賞している文学の大家ですが、知る人ぞ知る、かなり昔からの馬キチでもあります。
 月刊「優駿」で連載している「競馬徒然草」はだいぶ前から、少なくとも十数年間も続いています。最近はあまり「優駿」を購読していないが、氏の連載だけは立ち読みでもいいから、見逃したくないものです。

 「競馬徒然草」よりもさらに昔、僕はまだ競馬の世界を知らない1985年4月~1986年3月、同じく「優駿」に「馬事公苑前便り」のタイトルで連載していたエッセイをまとめたのが、題記の本になります。

 1985年と言えば、皇帝シボリルドルフが古馬として完成し、ミホシンザンがクラシック2冠を獲得した年でした。

 あとがきの文に共感を覚えました。
 「競馬は年々歳々、あらたまっていく。新しい馬が現れ、古い馬は一頭ずつ去る。夜中に寝覚めして、忘れかけていた馬たちの名を数えてあげていると、泣き出したくなるほどの、時の流れである。」

 ふっと昔に走っていた馬の名前や姿が浮かんでくることは、僕もよくあります。
 時の流れの速いことを無情に思う一方、歳月を鮮やかに感じさせてくれた馬たちの存在を、やはり感謝の念を禁じ得ないものです。