【読後感】「江戸へ旅する本」(矢崎市朗、近代文芸社)2008-04-17 23:19:08

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 江戸時代にタイムスリップして、1ヶ月間ぐらいのツアー旅行ができるなら、という視点に立って、江戸を紹介する本です。
 その江戸時代も、主に宝暦、明和から、天明、寛政を経て、そして文化、文政の頃までという、僕も一番好きで興味が沸く時代です。

 花のお江戸と言えば、多くの人は1700年前後の元禄時代を思い浮かべるかも知れませんが、その繁栄期から更に百年以上も経つ文化、文政年間になると、庶民の力がより台頭し、さらに多種多様なカルチャーが形成された時代です。退廃的な部分を帯びながらも、まさに文化的な爛熟期だと言えましょう。

 江戸時代は古いイメージがありますが、文政あたりだといまから二百年も経っていないので、われわれからわずか数世代前の人が過ごしていた時代なんですね。
 その数世代前の先祖たちは、長屋に住み、往来する物売りの呼び声を聞き、相撲や歌舞伎に熱を上げ、春の桜や秋の菊を楽しんでいました。
 祭り好き、きっぷがよい、「粋」とか「いなせ」といったものを、こよなく愛する人たちでした。


 この本のなかでも、一番興味深いなのが、まさにその「江戸の生活」を紹介した第3章です。
 年間の祭り、四季の行事、銭湯、床屋、寄席、出版業......実にいろいろなものが紹介されています。そのひとつひとつが、楽しいネタです。
 例えば食べ物も、そば、寿司、鰻の蒲焼き.....メニューや値段も出たりして、僕にはとてもおもしろいです。

 第4章は、ツアーガイドらしく(?)、江戸の名所を紹介しています。
 実地まではいかなくても、これは、現代の地図と見比べながら、あれこれと調べて遊んでみたいものです。


 作者の文章が、多少気になるところもありますが、そんなことよりも内容の面白さに目を奪われて、大いに楽しめた一冊でした。

コメント

_ why ― 2008-04-24 11:36:51

面白そうな本ですね。表紙も江戸らしい色と模様と籠文字ではありませんか。
江戸文化というと、ルネッサンスのイメージがあります。百花斉放、百家争鳴の賑わいぶりだったのでしょうね。
いなせ、幸田文も使った粋な言葉ですね。

_ T.Fujimoto ― 2008-04-29 00:50:32

whyさん、面白い本ですよ。
図書館で借りていたもので、すでに返却しました。本当は手元に置いておきたい一冊です。

実は、幸田文も、近所の古本屋では見当たらず、やはり図書館で読んだりするだけで、ちょっと残念です。

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