十四、五年ひと昔前2010-04-28 23:00:24

 2週間前の4月14日、netkeiba.comで読める合田直弘氏のコラムは、次のように結んでいました。
「引退までに彼女があと何戦するかわからないが、機会がある方はぜひ、ゼニヤッタが走る日の競馬場にお出かけになることをお薦めしたい。競馬ファンとして、至福の時間を楽しめるはずである。」

 G1アップルブロッサムHを楽勝して、ゼニヤッタ(Zenyatta)は連勝を16に伸ばし、この数字はあのシガー(Cigar)の記録に並ぶものです。
 シガーと言えばまだ記憶に新しい、と一瞬は勘違いもしたが、16連勝を達成したのは1996年、その前に10戦10勝というパーフェクトの成績を残したのは1995年でした。

 Sports Illustratedから出しているスポーツ年鑑、たまたまその1996年版だけ買ってあって、いまも手元にあります。
 ページを開くと、競馬部門のトップページは「Victory Cigar」の表題の下、マッサチューセッツHを激走するシガーの写真が飾られています。
 フィギュアスケートのトップページは世界選手権で優勝した中国の「氷上胡蝶」陳露でしたし、あのRoy Jones, Jr.がまだIBFスーパーミドル級チャンピオンで、カラーページにはメジャーリーグに新風を巻き起こしたルーキーとして、野茂英雄の写真が大きく掲載されています。
 つまり、もうひと昔ふた昔も前のこととなりました。
 
 しかし、アメリカの競馬で Cigarの前に16連勝した馬はと言えば、実は1945年生まれのサイテーション(Citation)まで遡らなければなりません。シガーからゼニヤッタまでは十四、五年ですが、サイテーションからシガーまでは実に四、五十年の歳月を要してました。
 そう考えると、16連勝もする歴史的名馬2頭と同時代を生きたというのは、ラッキーなのかも知れません。

 サイテーションとシガー、偶然どちらも連勝は16でストップしてしまったのですが。

コメント

_ 花うさぎ ― 2010-04-29 08:48:30

いつも思うんですが、競馬の馬って、どういうつもりで走っているのですか。
自分のために走っているのですか。それとも、騎手のためにがんばってくれているのでしょうか。
また、走りたいから走っていて、その結果、順位がつくのか。
それとも、他の馬よりも、速く走ることに魅かれるのか。

どうなんでしょう。それともこっそり先に「銭やった」から、走っているのですか。

_ T.Fujimoto ― 2010-04-30 08:36:03

花うさぎさん、競走馬は何のために誰のために走るのか、よく聞かれる問題の1つです。

「いかなるレースであろうと、サラブレッドは最後の山場ですべての筋肉をフル回転させる。しかしそれは、レースを勝つためではない。それは、騎手を喜ばすためである。ウマは、とても敏感できわめて協調的な生き物である。自分に乗っている人間に敬意を払い、すべての命令に応えようとする。」
「競馬の動物学 ホース・ウォッチング」の作者・デズモンド・モリスはこのように言い切りました。
あの馬はレースの意味を知って、ゴール板の位置がわかる、と時々言われることがあります。そんな馬が例え存在するとしても異例中の異例です。レース後の厩務員や騎手の反応から、どれぐらい喜ばせることができたかを理解しているかも知れませんが、出入りの激しい競馬のレースで、ゴールの瞬間にレースに勝ったかどうかを理解することは馬には難しいと思われ、デズモンド・モリスは「できるはずもない」と言っています。

_ 花うさぎ ― 2010-05-01 09:47:17

ということは、馬は「人のために走ってくれている」のですね。
競走馬の末路を思うと、切ない話ですね。
でも、こういう世界に触れる時、「かわいそう」という言葉は禁物ですね。
どこかで感性も知性にもあいまいな部分を残さないと人は生きられないものですから。

_ T.Fujimoto ― 2010-05-04 08:45:39

花うさぎさん、おはようございます。
野生馬が全力でギャロップする距離は極めて短く、心拍数が平常時の7倍以上の状態を継続する競馬のレースは、明らかに馬にとっては異常な状態です。競走で素晴らしい闘志を発揮するのはある種の興奮状態が必要です。しかし、興奮状態のなか、多くの馬がよけいに人を信頼し、指示通りにしていることが報告されています。
末路がかなり切ないなのは確かで、それは馬も人も同じだと思います。落馬した騎手を怪我した馬が気使うシーンがテレビの画面に映り出されることもありますし、時にはまるで騎手を自分の一部と認めたかとような挙動も見られます。馬は人間より大きく、力が強く、本気で反抗すれば、人は馬を走らせることはできません。トレーニングのメニューもレース中の指示も約束事ですが、ある約束事の範囲内、人と馬とは極めて高い信頼関係を築いているようです。このように馴致される動物が存在するのは奇跡に近いものがあり、人と馬の信頼関係は素晴らしいと思います。

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