三宝2008-12-30 01:00:13

 金庸の武侠小説で最初に読んだのは「倚天屠龍記」。新聞での連載を毎朝、楽しみにしていたのは、前にも書いた通りです(http://tbbird.asablo.jp/blog/2006/09/21/531978)。

 図書館の開架に「倚天屠龍記」の日本語訳を見かけ、懐かしくてその第五巻を手に取りました。


 一気に読み進んだが、明教教祖の主人公・張無忌が、囚われている謝遜を求めて少林寺を訪ねたところですが、

 空聞と張無忌・楊逍・殷天正らは時候の挨拶を交わすとすぐに黙り込んだ。張無忌が言った。
 「方丈神僧、われら一同用もなく三宝殿に参ったわけではございません。こうして方丈にお目通り願いましたのは、わが教の謝法王を釈放していただきたいからです。......」


 小説には羅漢堂、達磨堂、般若院、方丈精舎などの建物が登場しますが、少林寺には三宝殿という名前の建物は存在しません。
 誤訳だと言えないかも知れませんが、用もなく三宝殿に参ったわけではない、と書いても、日本の読者の多くは意味がわからないだと思います。

 たぶん原文は「無事不登三寶殿」、大事な要があるこそ訪ねてきたことを表す慣用句です。


 ところで、「無事不登三宝殿」はよく使っても、なぜ「三宝殿」なのか、「三宝」とはなにかは、実はよく知らなかったので、ついてに調べてみました。
 仏教では佛、法、僧(”釋氏要覽”:「 三寶、謂佛、法、僧也。」)。
 また、道教では耳、目、口。
 だとか。

 三種の神器ではまさかないでしょうが、もっと具体的な仏具、法器をひそかに想像していたのが、まったくの見当違いでした。

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