なれずし2016-05-24 22:43:46

 「食の文化地理 ~舌のフィールドワーク」(石毛直道、朝日選書)を図書館から借りていますが、なかなか面白いです。
 「すしの由来」の章では、「なれずし」について書かれています。

 「この古代のすしの作り方が、琵琶湖周辺にいまでも伝えられている。淡水産の魚であるフナに塩をしたのち、飯と一緒に木製の桶に漬け込むのだ。桶の底に飯を敷き詰め、そのうえにフナを並べ、さらにそのうえに飯をのせ、フナを並べる、というように飯とフナ」を交互にサンドイッチ状に詰め、内蓋ををして、そのうえから重石をのせて数ヶ月保存する。」
 「こうしてできた鮒ずしは、スライスして生のまま食べる。米飯は分解してペースト状になっているので、飯は捨てて魚だけ食べる。」
 「なれずしは、現在でも東南アジア諸国に分布している。文献資料で調べると、かつては中国でもなれずしが存在したが、現在では忘れられた食品となったことがわかる。」


 青木正児先生の「酒の肴」では、中国北魏時代の書物「齊民要術」を引き、中国のなれずしも取り上げています。

 賈思勰が編纂したその「齊民要術」を見ましたが、はたして巻第八に、作魚鮓の一篇があり、なれずしの作り方を詳しく記しています。
 「凡作鮓,春秋為時,冬夏不佳。取新鯉魚,去鱗訖,則臠。臠形長二寸,廣一寸,厚五分,皆使臠別有皮。手擲著盆水中,浸洗去血。臠訖,漉出,更於清水中淨洗。漉著盤中,以白鹽散之。盛著籠中,平板石上迮去水。水盡,炙一片,嘗鹹淡。炊秔米飯為糝,并茱萸、橘皮、好酒,於盆中合和之。布魚於瓮子中,一行魚,一行糝,以滿為限。腹腴居上。魚上多與糝。以竹篛交橫帖上,削竹插瓮子口內,交橫絡之。著屋中。赤漿出,傾卻。白漿出,味酸,便熟。食時手擘,刀切則腥。」
https://zh.wikisource.org/wiki/%E9%BD%8A%E6%B0%91%E8%A6%81%E8%A1%93/%E5%8D%B7%E7%AC%AC%E5%85%AB#.E4.BD.9C.E9.AD.9A.E9.AE.93.E7.AC.AC.E4.B8.83.E5.8D.81.E5.9B.9B

 烏山椒(茱萸)、ミカンの皮(橘皮)、お酒を用いるが、その他基本的な作り方は日本の鮒ずしとほぼ同じです。
 すなわち、甕のなかに魚を一段ならべては上に飯を一段着け、甕いっぱいになるまで繰り返し、笹の葉で覆い、赤い汁が出る間は傾けてこぼし、白い汁が出て酸味が着たら熟した、と言えるものです。

 青木先生が若い頃、修学旅行の際に名物の鮒ずしを買い、帰宅後に開けてみたら悪臭と飯の腐りように驚き、人知れず似捨ててしまった失敗談を、前も書いたことがあったと記憶しています。
 初めての人にはハードルが若干高い食べ物なのかも知れません。