再びダチョウ、および非可逆な喩えについて2015-02-08 16:36:23

 駝鳥についてを書いた後、気になってちょっと調べてみたら、中国では唐代にも西の国々からしばしば献上されていたそうです。


 「古今圖書集成」の「駝鳥部彙考」を見ると、「祖法児國山駝鶏」の項で、「鶏身如鶴 長三四尺 脚二指 毛如駝 行亦如駝 故喚駝鶏」と記されています。
 「集解」では、「陳藏器曰 駝鳥如駝 生西戎 高宗永徽中吐火羅獻之 高七尺 足如橐駝 鼓翅而行日三百里 食銅鐵也」ともあります。

 毛がラクダに似ているとか、足がラクダに似ているとか、いろいろとラクダとの関連を伝えていますが、やがてこの鳥の実物の姿が、中国の人々の目から、記憶から消えていきました。
 そして、駝鳥という鳥の姿を、絵師たちは、残された文字情報から再現しなければならない事態となりました。

 日照東照宮の象のレリーフと同じです。(http://tbbird.asablo.jp/blog/2013/09/11/6977940


 アメリカの東洋学者Berthold Laufer(ベルトルイ・ラウファー)が書いた「Chinese Clay Figures」の128ページをぜひ見ておきたいです。
<http://www.rhinoresourcecenter.com/pdf_files/122/1225786358.pdf>

 「古今圖書集成」の「駝鳥図」を取り上げていますが、翼を持った二本足のラクダのような、ほぼ怪物です。新発見の動物だと勘違いして、「Avi-camelus bipes(ニホンアシ・トリラクダ)」だと命名してはいけない、と作者は冗談ながら指摘しました。
 その1ページ前の「草本綱目」の絵は、足のみをラクダに似る形に留めたところ、だいぶマシだと思いますが、やはり現実のダチョウとは似つかない姿です。そもそも横に「火鶏」の文字も見え、日本の江戸時代同様、七面鳥との混同があるように伺えます。


 「詩経」に、美女の姿を描いている名文が残っています。
 「手如柔荑,膚如凝脂,領如蝤蠐,齒如瓠犀,螓首蛾眉...」

 「柔荑」は柔らかい草のようなもので、「凝脂」は固まった脂身です。「蝤蠐」は蚕の繭(まゆ)であるらしく、「瓠犀」はカボチャあるいはスイカの種を塩煎りした「瓜子」の類だと言われています。

 これらのものから、美女の姿を復元できるかと言うと、やはり本物を目にしたことがないと、難しいのではないでしょうか?

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