カリガリ博士と夢の国2013-05-13 22:58:15

 やっぱりYouTubeとWikipediaは偉大だと、改めて思う今日この頃です。
 1920年代、戦敗国ドイツでウーファ社が設立され、そこを根城に表現主義映画が生み出されました。この最後のサイレント時代の名作、本のなかでしか知らなかった「カリガリ博士のキャビネット」が、なんとYouTubeで見れます。


 併せて、Wikipediaの「カリガリ博士」を読んだら、どうやらこの映画のセットの制作に携わった人たちのなかに、ちょっと前から気になっているアルフレート・クビーン(Alfred Kubin)がいるそうです。

 ちょっとおどろおどろしい絵画を描く人ですが、僕が気になったのは、画家の一冊だけ残している小説のほうです。
 日本語のウィキペディアにはまだアルフレート・クビーンのエントリーができていないようですが、英語版のWikipediaには記載があり、「Die Andere Seite」という作品です。日本語で「裏面」、もしくは「対極」というタイトルで訳されているこの作品は、村上春樹さんの「世界の終わり~」の元ネタと噂され、かなり怪しい「夢の国」が描かれています。

 「夢の国」は、中国の西部とカザフ共和国の間に広がる天山山脈に位置し、モンゴル系部族に囲まれた中の碧眼の人々が作る小さな国です。
 「夢の国」の社会の一員として招待されるための選抜は、厳正に夢を信じる能力の有無にかかっていますが、招待が決定されても、旅行者は自分で「夢の国」への旅の手配をしなくてはなりません。すなわち、サマルカントから国境までキャラバンで向かい、そこで首都ペラル行きの汽車の切符を受け取ることです。

 Wikipediaの英語版にはまだこの作品のエントリーがありませんが、ドイツ語版にはあるようです。僕はドイツ語が読めませんが、世の中は偉い人がたくさんいるので、そのうち英語版や日本語版も作られるかも知れません。
 しかし、偉大なWikipediaにも微妙に記述が矛盾している箇所があり、すべて信用して良いとは限りません。
 例えば、いまアルフレート・クビーンを見ると、「青騎士」のメンバーだとしている箇所と、いや、メンバーではない、という記載の箇所があります。「青騎士」を見れば、日本語版ウィキペディアの「青騎士」では第一回展にパウル・クレーが参加している記述になっていますが、「パウル・クレー」のエントリーでは1912年の第二回展から参加したことになっています。(手元に、僕が就職した年に買った古いクレー画集がありますが、その年譜では第二回展からの参加、というほうの記述になっています)

 YouTubeの記述も疑ってかかったほうが良い場合があるかも知れません。
 「カリガリ博士」の映像、「The Cabinet of Dr. Caligari (1921)」というタイトルが付いていますが、手元の「パリ・1920年代 シュール・レアリスムからアール・デコまで」(渡辺淳、丸善ライブラリー)によれば、1920年の作品だそうです。