馬の歯 ― 2013-05-01 21:47:56
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中国の四字熟語に「馬歯徒長」というのがあります。馬キチとしてはずいぶん前から気になっていて、実はここの一周年のとき(つまり2007年の古い記事に)も、使ってみたことがあります。
使っておきながら不謹慎にも、この「馬歯徒長」の「長」は、はたして「chang2」であるか、それとも「zhang3」であるか、実際のところ、あまり自信がないです。
意味自体は概ね、自ら大した成果や業績を残せず、いたずら歳ばかり取ってしまった様を表すものだと思いますが、前者の発音だと歳とともに馬の歯が長く伸びる現象、後者だと歳ともに馬の歯が増えるという現象に因むことになります。
一応後者の「zhang3」で僕は音読していますが、確かに馬の歯は長く、しかも歳とともに歯茎が後退してますます長くなるように見えるので、前者もありかも、と思ったりします。
「Never look a gift horse in the mouth.」という英文を、最近目にしました。
直訳すると、贈り物の馬の口の中を見てはいけない、ということになりますが、なるほど、「競馬の動物学 ~ホース・ウォッチング」(デズモンド・モリス著、渡辺政隆訳)のなかで言及された諺だなと、思い出しました。
馬の年齢は歯を調べればわかる、という事実に基づき、贈り物のあら探しや品定めをしてはいけない、という意味で使われているようです。
本を探し出してページをめくったら、デズモンド・モリスは以下のように詳しく書いています(文章が長いので、若干省略します):
誕生時 生まれたばかりの子ウマは、上顎と下顎にそれぞれ二本ずつの小さな門歯しかない。それらは乳歯で、やがておとなの歯と生え変わる。
生後四~六週目 上下の顎にさらに二本の門歯が生える。最初から中央に生えていた門歯の横に、それぞれ第二歯が生えるのである。
生後六ヶ月目 上下の顎のすでに生えている歯の外側に、さらに二本ずつの門歯が加わる。これで子ウマには、上顎と下顎に六本ずつ、合計十二本の歯が生えたことになる。......それらの歯には「歯冠」があって、頂端がちょっとくぼんでいる。この歯冠は歯が摩滅するにつれて消失するもので、その消失の程度がウマの年齢を推定する決め手となる。
ほう、歯が成長して長くなるだけでなく、摩滅して短くなる歯の形からも馬の年齢を推測するのですね。
またまた続きます:
生後一年目 第一歯の歯冠は消失し、頂端は磨り減ってすべすべになっている。
生後一年六ヶ月目 第一歯と第二歯の歯冠は消失し、頂端はなめらかになっているが、第三歯にはまだ歯冠が認められる。
生後二年目 すべての歯の歯冠が消失し、頂端はなめらかになっている。
生後二年六ヶ月目 乳歯の第一歯が抜け、歯冠のある永久歯に生え換える。
生後三年六ヶ月目 乳歯の第二歯が抜け、やはり歯冠のある永久歯に生え換える。
生後四年六ヶ月目 すべての乳歯が抜けて、もっと大きくて歯冠のある永久歯に生え換える。
生後七年目 第一永久歯の歯冠が摩滅してなめらかになっている。
生後八年目 第二永久歯の歯冠が摩滅してなめらかになっているが、第三永久歯にはまだ歯冠がある。
生後九年目 すべての門歯の歯冠が摩滅して消滅している。第一永久歯と第二永久歯には、デンタルスターという新しい特徴が現れている。かつて歯冠があった位置と歯の前部先端とのあいだに、黒っぽい短い線が出現しているのである。......
生後十年目 すべての歯にデンタルスターが認められる。
生後十三年目 歯の頂端は断面が丸くなっており、デンタルスターはまん中に位置する黒い点になっている。
生後十五年目 上顎の第三門歯の外側に、歯茎から歯の中ほどにかけて縦溝が見られる。......
生後二十年目 上顎の第三門歯の縦溝が頂端にまで達し、歯全体にわたって認められるようになっている。
生後二十五年目 歯の上部から縦溝が消失し、下半分でしか認められなくなっている。
生後三十年目 縦溝が完全に消失している。
さすがに三十歳まで生きられる馬は少数ですが、この高齢までに至って、馬の歯の特徴は馬齢の推定に使えるのは、ある意味すごいことです。
贈り物だったら、少なくとも贈り主の前に馬の口を開けて調べるのは憚れますが、馬商人から馬を買うときなら、ちゃんと口の中をチェックしたほうが良いでしょう。
しかし、摩滅して平らになった歯の頂端を先の尖ったで削って歯冠を再現し、歳をとった馬を若駒のように見せる不肖な馬商人もいるようです。残念ながら、腐り縄で馬をつなぐようなもので、頼りにならないかも知れません。
中国の四字熟語に「馬歯徒長」というのがあります。馬キチとしてはずいぶん前から気になっていて、実はここの一周年のとき(つまり2007年の古い記事に)も、使ってみたことがあります。
使っておきながら不謹慎にも、この「馬歯徒長」の「長」は、はたして「chang2」であるか、それとも「zhang3」であるか、実際のところ、あまり自信がないです。
意味自体は概ね、自ら大した成果や業績を残せず、いたずら歳ばかり取ってしまった様を表すものだと思いますが、前者の発音だと歳とともに馬の歯が長く伸びる現象、後者だと歳ともに馬の歯が増えるという現象に因むことになります。
一応後者の「zhang3」で僕は音読していますが、確かに馬の歯は長く、しかも歳とともに歯茎が後退してますます長くなるように見えるので、前者もありかも、と思ったりします。
「Never look a gift horse in the mouth.」という英文を、最近目にしました。
直訳すると、贈り物の馬の口の中を見てはいけない、ということになりますが、なるほど、「競馬の動物学 ~ホース・ウォッチング」(デズモンド・モリス著、渡辺政隆訳)のなかで言及された諺だなと、思い出しました。
馬の年齢は歯を調べればわかる、という事実に基づき、贈り物のあら探しや品定めをしてはいけない、という意味で使われているようです。
本を探し出してページをめくったら、デズモンド・モリスは以下のように詳しく書いています(文章が長いので、若干省略します):
誕生時 生まれたばかりの子ウマは、上顎と下顎にそれぞれ二本ずつの小さな門歯しかない。それらは乳歯で、やがておとなの歯と生え変わる。
生後四~六週目 上下の顎にさらに二本の門歯が生える。最初から中央に生えていた門歯の横に、それぞれ第二歯が生えるのである。
生後六ヶ月目 上下の顎のすでに生えている歯の外側に、さらに二本ずつの門歯が加わる。これで子ウマには、上顎と下顎に六本ずつ、合計十二本の歯が生えたことになる。......それらの歯には「歯冠」があって、頂端がちょっとくぼんでいる。この歯冠は歯が摩滅するにつれて消失するもので、その消失の程度がウマの年齢を推定する決め手となる。
ほう、歯が成長して長くなるだけでなく、摩滅して短くなる歯の形からも馬の年齢を推測するのですね。
またまた続きます:
生後一年目 第一歯の歯冠は消失し、頂端は磨り減ってすべすべになっている。
生後一年六ヶ月目 第一歯と第二歯の歯冠は消失し、頂端はなめらかになっているが、第三歯にはまだ歯冠が認められる。
生後二年目 すべての歯の歯冠が消失し、頂端はなめらかになっている。
生後二年六ヶ月目 乳歯の第一歯が抜け、歯冠のある永久歯に生え換える。
生後三年六ヶ月目 乳歯の第二歯が抜け、やはり歯冠のある永久歯に生え換える。
生後四年六ヶ月目 すべての乳歯が抜けて、もっと大きくて歯冠のある永久歯に生え換える。
生後七年目 第一永久歯の歯冠が摩滅してなめらかになっている。
生後八年目 第二永久歯の歯冠が摩滅してなめらかになっているが、第三永久歯にはまだ歯冠がある。
生後九年目 すべての門歯の歯冠が摩滅して消滅している。第一永久歯と第二永久歯には、デンタルスターという新しい特徴が現れている。かつて歯冠があった位置と歯の前部先端とのあいだに、黒っぽい短い線が出現しているのである。......
生後十年目 すべての歯にデンタルスターが認められる。
生後十三年目 歯の頂端は断面が丸くなっており、デンタルスターはまん中に位置する黒い点になっている。
生後十五年目 上顎の第三門歯の外側に、歯茎から歯の中ほどにかけて縦溝が見られる。......
生後二十年目 上顎の第三門歯の縦溝が頂端にまで達し、歯全体にわたって認められるようになっている。
生後二十五年目 歯の上部から縦溝が消失し、下半分でしか認められなくなっている。
生後三十年目 縦溝が完全に消失している。
さすがに三十歳まで生きられる馬は少数ですが、この高齢までに至って、馬の歯の特徴は馬齢の推定に使えるのは、ある意味すごいことです。
贈り物だったら、少なくとも贈り主の前に馬の口を開けて調べるのは憚れますが、馬商人から馬を買うときなら、ちゃんと口の中をチェックしたほうが良いでしょう。
しかし、摩滅して平らになった歯の頂端を先の尖ったで削って歯冠を再現し、歳をとった馬を若駒のように見せる不肖な馬商人もいるようです。残念ながら、腐り縄で馬をつなぐようなもので、頼りにならないかも知れません。
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