この気なんの気、木になる気2012-11-14 21:05:48

 FaceBookで、sharonさんが「いいね」を付けたので、「かしこい旅、エクスペディア」の不定期連載「ホテルの天空のバー」をサラッと読んでみました。(http://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=420992601289891&id=181568441898976

 「ザ・ペニンシュラ上海の『エリーズ・バー』。14階のテラス席からは上海を象徴する風景、光り輝く外灘、黄浦江、浦東の絶景を見下ろすことができます。バーテンの笑顔も気になるところ。」、とあります。
 なるほど、確かに絶景です。

 しかし、この「バーテンの笑顔」は、いったいどこが気がかりで、どうして心配になるのか、よくわかりませんでした。
 確かに高いテラス席ですが、バーテンダーのかわりに背後を心配してあげなければならないほど危険なのかと言っても、そうでもなさそうです。
 気に入る、というつもりで間違って使ったのか、気になります。


 気に入る、気になる、気に掛かる、気に障る、気に留める。
 気がある、気が張る、気が付く、気が抜ける、気が遠くなる。
 気が小さい、気が強い、気が重い、気が早い、気が多い。

 適当に思いつくだけでも、いろいろな種類の気があり、気が気でない、です。


 ヨガの行者たちは「呼吸は生命なり」と言いますが、中華文明においても、「気」と生命の結び付きは明白です。
 「人活著、就是為了一口気」という話をした人がいましたし、「養天地正気」という言い方も、耳にします。

 生まれたばかりの赤ちゃんは口を大きく開いて、飢えたように空気を求めます。
 目を閉じ、腕を宙に泳がせ、そして突然(たいていは優しく体を叩かれて)、ふと小さな吐息がもたれかと思うと、すぐあとに大きく空気を吸い込みます。ポンプに空気が入ります。自律過程が開始し、生涯の六億回ないし七億回の呼吸の第三回の息を、赤ちゃんの体は深く吸い込んだのであります。

 魔法のようなこの瞬間、生命誕生の瞬間と言うのは非科学的ですが、明らかひとつのステージ、ひとつの段階の移行です。息、気、魂といった概念がひとつになって理解できる瞬間です。


 ライアル・ワトソン博士の著書「風の博物誌」によれば、チュートン人の神話ではオーディンが風の神です。
 「大勢の荒くれ者のなかでももっとも勢いの良い狩人」ですが、彼がトネリコとカワラハンノキの丸太の上で息をすると、木に魂が吹き込まれたそうです。

 そして、その木、やがて人間になった、とされています。