ふたたび偶然、もしくは運について2012-05-30 21:49:04

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 1967年、ロンドンのある警察署の電話番号が40116に変更されました。
 直後、翌晩の勤務時間内に電話をよこすように、署のある警官が友人に言いましたが、番号を間違えて40166と伝えてしまいました。誤りに気づかなかった警官は、その夜のパトロール中、ある工場にひとつだけ明かりがついたままなのを発見し、同僚と一緒に中に入って調べることになりました。二人が足を踏み入れると同時に、電話が鳴りました。くだんの警官が受話器を取ると、驚いたことに、かけてきたのは彼が前日間違った番号を教えた友人です。
 その工場の電話、電話帳に掲載されない非公開の番号ですが、40166でした。


 1983年8月24日、アムトラック鉄道のシルバー・ミーティク号は、いつもの通り、マイアミからニューヨークに向けて出発しました。
 午後7時40分、ジョージア州サヴァナを通過中、橋の上で魚釣りをしていた女性をはね、午後9時30分にはわずか25キロ先のサウスカロライナ州リッジランドで、線路脇に駐車中のトラックに接触し、車を大破させました。
 動揺した乗員を交代して運転を再開したところ、翌朝の午前1時10分、ノースカロライナ州ローランドの踏み切りで、今度はトラック・トレーラーに衝突しました。この事故で客車2両が脱線し、機関士を含む21名が病院に運ばれました。乗員を再度交代してなんと列車を再出発させましたが、またもや午前2時37分、警報を無視して踏み切りを渡ろうとして乗用車に正面衝突したそうです。
 ここに至って、国家運輸安全委員会は、エンジンの性能等に疑問をさしはさむべく理由がなかったにもかかわらず、このアムトラック117号を「不良車」処分としました。


 英語の「chance」が、「物の落下の仕方」を意味する古フランス語の cheance から派生されたことからもわかるように、「偶然」は当初からさいころ賭博のまやかしを包含しているように思われます。
 幸運や悪運は存在するものです。相関性のない、個別であるはずの出来事が偶然に束になって起こると、われわれの度肝を抜くことになります。

 シルバー・ミーティク号はあまりに運がなかったのですが、不思議なほどに幸運が連続する人もいます。


 カジノに、「クラップス」という、客がサイコロを2つ投げ、出目の合計で勝敗を決める単純なゲームがあります。
 ・最初に7, 11が出ると勝ち。
 ・最初に2, 3, 12が出ると負け。
 ・他の目、4, 5, 6, 8, 9, 10が出た場合、その目がポイントとなる。 ポイントが確定した後、そのままサイコロを振り、ポイントを再度出すと勝ち、7を出すと負け。ポイントおよび7以外は投げ直す。
 ・負けると、振り手をほかの客に交代する。

 確率計算によれば、振り手は五分五分よりほんの少しだけ不利、つまり長くやっていれば胴元が有利になります。

 しかし、1950年、ラスベガスの「デザート・イン」で、ある男はなんと28回続けて勝ち目を出し、カジノに莫大な損害を与えたそうです。
 

 また、「ミセズ・ホジキンの奇跡」という話を、井崎脩五郎が著書で紹介しています。

 1964年のノーベル化学賞を受賞したドロシィ・マリー・ホジキンは、1947年に37歳の若さで史上初のロイヤル・ソサエティの女性会員になった才媛ですが、生涯に一度だけ、競馬場に足を運んだことがあります。
 それは、1955年6月8日、英国ダービーが行われた日のエプソム競馬場でした。
 第1レース、単勝オッズ36倍の伏兵ミストラルキングが勝ちましたが、ホジキン女史は、この馬の単勝馬券を持っていました。しかも、ミストラルキングの単勝馬券以外、何も買っていませんでした。
 ビギナーズラックのまぐれ当たりだったと思われますが、この女性化学者の幸運は続きます。デビューわずか3戦目のフィルドレークが勝ったダービーを含めて、なんと全8レースの単勝をすべて1点買いで的中させてそうです。

 偶然ではなく、なにか秘訣がもしあれば、是非ひそかに教えてほしいと思います。