スマート、クラウド、ビッグデータ2012-05-07 22:12:25

 スマートフォン、スマートTV、スマートハウス、スマートシティ......近頃は「スマート」が流行っているようです。

 この場合、本来の「利口な」、「洗練された」と言った意味からやや逸脱し、むしろ多くの機能が「融合」されたものを表すのに使われているような気がします。


 情報科学の分野では、いつも様々なカタカナ語が生まれて、流行ったり、消えたりします。時代の流れとともに、多くのバズワード(buzzword)が、いつも間にか死語になっています。
 例えば20年前に人口に膾炙した「ファジー」など、いまではほとんど聞かれなくなりましたね。
 ニューラル・ネットワーク、ダウンサイジング、バーチャル・リアリティ、ヘテロジニアス、ユビキタスなども、死んでいるわけではないでしょうが、ブームだった頃に比べると、目にする機会がだいぶ減っています。


 いま「旬」のキーワードと言えば、ひとつは冒頭に上げた「スマート」で、あとは「クラウド・コンピューティング」や、あるいは「ビッグ・データ」とかが、流行しているようです。
 テクニカル・タームに留まらず、「クラウド」はとっくにビジネスになっているし、「ビッグデータ」もそうなる勢いがあります。

 こういうバズワードは時代とともに生きるものですから、逆に流行のバズワードから、時代の傾向が見えるかも知れません。


 ちょっと前まで、この高度情報化社会は多くの情報が氾濫している、と言うと、情報の海に溺れているようなイメージが連想され、若干マイナスな意味で捉えられがっちです。
 「情報爆発」もそうで、情報を管理する事の難しさばかりが注目され、情報オーバロードと懸念されたりしまう。

 しかしどうも、いまは違うようです。
 データ工学の権威である喜連川優教授によれば、むしろ積極手に情報を爆発させるべき、だそうです。
 人間がしゃべる情報だけでなく、無数の機械やセンサーがしゃべるもっとたくさんの情報を、インターネットの向こうのクラウドに賢く格納し、賢く検索、分析して、新たな価値を創出するテクノロジーが望まれています。

 例えば、従来のカーナビは、特定の個人が、予め決められている用途に使う道具です。しかし、未来の車載システムは、遥かに膨大な情報を融合して、スマートに扱えるようになるかも知れません。
 ドライバには、道路の混雑具合、ドライバの運転技術など様々な要素を考慮した推奨ルートや到着予想時間が知らされるかも知れません。保険会社では、車の種類・年数だけでなく、ドライバの運転の仕方(急発進、急ブレーギの回数とか)、よく通るルート(事故多発地帯か)などから、適切な保険料を算出できるかも知れません。国土交通省は、いまの交通予測よりも精度の高い情報に基づいて、路線を建設し、適切な時間帯に修理工事を実施できるかも知れません。


 なんだか、素敵な未来が待っているような気がしました。

 いや、本当にそうなのでしょうか?
 まず、これらの情報は一体誰のものか、ということだけでも僕などは気になってしまいます。
 上の例で言えば、プライベートが侵されないように、個人を特定できないように処理さえすれば、カーナビなどで収集した情報を、メーカや販社が統計して使ってよいものでしょうか?

 マーク・ザッカーバーグは、世界中の人たちがもっとオープンに意見を言い合い、オープンに結びつけば、素敵な世の中になると信じて、実名登録を基本とするFacebookを作ったそうです。
 問題は、近頃欧米で話題になっている「Facebook疲れ」の話を聞くと、誰もがそう思っているわけではないらしいです。