水の洞窟、その12010-08-08 01:42:44

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 最近、気になって、もしくは気に入ったサイトの1つが、Atlas Obscura(http://atlasobscura.com/)のページです。
 残念ながら英語はあまり得意でないので、写真を中心に眺めたりしているだけですが、それでも地球はまだ思ったより広いことを気付くのに、十分でした。

 ブダペストに暮らすアメリカ人のDさん(Dylan Thurasさん)とMさん(Michelle Enemarkさん)、この二人によって共同で書かれている素敵なブログCurious Expeditionsは、前にもここで引用、紹介させて頂きましたが、Dさんのほうは、上のAtlas Obscuraの共同編集者も務めているようです。
 そのDさんによる Fingal's Caveという海食洞の記事(http://atlasobscura.com/place/fingal-s-cave)が、写真も迫力があって、とてもおもしろいと思います。

 Fingal's Caveは、1772年に発見・紹介されてから、ビクトリア女王、詩人のウィリアム・ワーズワース、作家のジュール・ベルヌ、作曲家のフェリックス・メンデルスゾーン、画家のジョゼフ・ターナーなど、実に多くの有名人が、この洞窟が位置する無人島を訪れました。
 六角柱状の玄武岩によって形成されるその大聖堂のような入り口、寄せる波が織りなす不思議なこだま、この洞窟はたくさんの人を魅了し、クリエイターたちの創作意欲を触発したそうです。

 名前にある「Fingal(フィンガル)」というのは、アイルランド・ケルト神話の英雄フィン・マクール(フィンランド人McCool)を指すそうです。
 フィン・マクール、またはその子供オシーンなどによるフィアナ騎士団の話は、北欧神話のなかでもかなり有名なほうで、僕もだいぶ小さいときから、そのいくつかを読んだり聞いたりした記憶があります。
 騎士団の勇者たちは魔剣や魔法の槍を使って、魔法の馬に跨って、頼まれれば怪物や巨人、そしてたくさんの妖精と戦ったりします。
 記述は素朴ですが、Fingal's Caveに相応しい、ロマンの香りがする幻想的な伝説だと思います。

水の洞窟、その22010-08-08 01:53:15

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 Fingal's Caveは凄い景観ですが、そういう横方向の洞窟だけでなく、地球上には水が溢れ出す縦の穴もたくさん存在します。

 久々に買った「National Geographic」の8月号は、バハマにあるブルーホール群を特集しています。
 ブルーホールは、Wikipediaによれば、かつての洞窟や鍾乳洞といった地形が何らかの理由により海中へ水没し、浅瀬に穴が空いたように形成された地形、だと定義されています。
 特に知名度が高いのが、中米ベリーズ海岸のGreat Blue Holeです。Atlas Obscuraのページに載っている(http://atlasobscura.com/place/great-blue-hole)のも、そのGreat Blue Holeだけのようです。

 しかし、それほど知られていないですが、Grand Bahama島の Chimney、Abaco島の Dan's Cave と Sawmill Sink、ロングアイランドの Dean's、 Andros島の Stargateなど、バハマには実に多くのブルーホールが点在し、宝庫だと言えます。

 これらのブルーホールは、つい最近まであまり系統的に研究されていなかったようです。今般のダイバーと科学者からなる探検チームの調査により、ようやくその神秘のベールがすこしずつ解明され、各洞窟のそれぞれの特徴も知られるようになってきたようです。

 例えば、表紙に飾った Dan's Caveは、ミネラルの柱が林立し、まさに海のなかに沈められた大規模の鍾乳石洞のようです。
 また、光が射し込めない深いところに、透明な海老や赤く青く光るバクテリアなど、おもしろい生物がたくさん生息しているブルーホールも多いです。
 特に Abaco島のSawmill Sinkは、陸の壁によって外海と隔離され、酸素を含まない深い海水層のおかげで、化石は非常にいい状態で残っているそうです。今回、National Geographicの調査クルーは、Bahamas Caves Research Foundationと協力しながら、2500年前のカメや珍しいワニの頭蓋骨、トカゲ、蛇、コウモリ、鳥の骨、いまではこのあたりで絶滅した動物、そして様々な植物の化石を採取しました。

 ブルーホールのなかには渦が巻いたり、真っ暗だったり、迷路のように多岐に枝分かれしたりするものが多く、危険が満ちています。しかしその一方、たくさんの秘密とロマンがいまもブルーホールの底に隠され、発掘を待っているようで、とても魅力的です。