「黒馬物語」の生みの親、そしてその親2009-08-26 21:51:00

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 高橋茅香子さんの「英語で人生をひろげる本」(晶文社)に、小さい時に読んだ岩波文庫版「黒馬物語」を、原書(「Black Beauty」)で読みたくなって、「スカイソフト」で注文した話が出ています。(「スカイソフト」はオンライン書店の先駆でしたが、不正アクセスによる顧客情報流出事件に関連し、残念ながらすでに2006年に閉鎖。)

 実はこの「Black Beauty」、僕も1冊、手元に置いています。アメリカのScholasstic Magazine社が1958年に出しているペーパーバックで、古書店の百円均一コーナーで拾ってきたのは、いまから十数年前です。


 イギリスの牧場で産まれた黒馬が、幸せだった牧場の子馬時代から、いろいろな事件に遭って、貸し馬車屋、辻馬車屋、穀物商人と転売されたあと、つい元の優しい馬丁ジョー・グリーンの元に戻った、という「Black Beauty」の話は、世界中の多くの少年少女に読まれて、児童文学のまさに古典です。

 作者のアンナ・シュウェル(Anna Sweel)が世に残した作品は、しかしこの「Black Beauty」のみです。
 1820年イギリスのノーフォークに生まれたアンナは貧しいながら穏やかな少女時代を送っていたが、10歳の頃に足に大怪我を負い、以後ほとんど歩けない一生を送っていたそうです。
 「Black Beauty」を書き始めたのは50歳の頃で、すでにアンナは病魔に襲われ、よく目眩をおこすようになっていました。体の調子がいいときに鉛筆で書いた話を、母親がそのつど清書したそうです。(調べていないですが、母親はかなり高齢になっていたはずです...)

 進んだり止まったり、6年あまりをかけてようやく完成した小説が、なんとか出版に漕ぎ着けられたのも、母親が長年、子供向けの話を書いていて編集者を知っていたからだろうと、伝記にあります。

 1877年の暮れに出版され、忽ち評判になりましたが、アンナの病状はすでに深刻になり、そして翌年の4月に亡くなりました。

 手元のペーパーバックにも、冒頭に作者が書いた短い謝辞が載っています:
 To My Dear and Honored MOTHER,
 Whose Life, No Less Than Her Pen, Has Been Devoted to the Welfare of Others, This Little Book Is Affectionately DEDICATED.