光~眼遇之則成色2009-03-05 00:06:34

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 講談社のブルーバックスシリーズと言えば、だいぶ古い(1986年)ですが、「馬の科学」というのが手元にあります。
 この本では馬の色覚について、以下のように書かれています。

 「馬の色覚についてはまだ不明なところが多いが、網膜には桿体と錐体の両方の視細胞が認められていることから、色覚域は狭いものの、ある程度の識別は可能といわれていいる。」


 もっと時代を遡ると、馬は色覚がない全色盲だと書かれている文献すら多いが、80年代でもまだこの程度の認識ですね。
 近年の研究結果によれば、鳥類とかは四色型色覚なのに対して、馬を含めてほとんどの哺乳類動物は二色型色覚だそうです。

 人間もほかの哺乳類同様、明るさを識別する桿体に較べると、色を識別する錐体の数が少ないですが、なぜか多くの人は3種類の錐体細胞を持つ三色型色覚に進化しています。
 いわゆる光の3原色は、まあ、三色型色覚を持つ人間を基準にしているものでしょう。

 X染色体上に位置する黄緑錐体(赤錐体)と緑錐体は、元は同じものだった経緯もあって、遺伝上の変異が生じやすいらしいです。どちらかの遺伝子を失ってしまうこともありますが、両方の中間的な特性を持つ「中間型」の錐体細胞を生み出したりすることもあるそうです。
 X染色体を1本しか持たない男性はこの遺伝上の影響を受けやすく、「中間型」の錐体を遺伝した場合も、通常の三色型色覚を前提とした色覚検査をパスできない場合が多いです。

 ところが、X染色体を2本持つ女性のなかには、片方が通常の黄緑錐体(赤錐体)と緑錐体、もう片方は「中間型」の錐体を持つケースがあるそうです。
 この場合、四色型色覚となるため、三色型色覚を持つ大多数の人が識別できるすべての色を見分けられるだけでなく、大多数の人がわからない、黄色/赤の混合光とオレンジ色の光の違いを区別ができたりします。

 wikipediaの「色覚異常」の項に、以下の一文が載っています:
 『正常色覚も異常色覚も単に人間の感覚であり、どちらが正しいわけでもないし、ある意味ではどちらも間違いだともいえる。なぜなら、そもそも物理学的には、「色」という物理量は存在せず、あくまで波長の違う可視光線を個々人の脳がどのように「色」として解釈するかでしかないからである。 ただ多数派が「正常」色覚者と呼ばれるだけである。』

 たぶんこれが正しい解釈なのでしょう。