スポーツの祭典、平和の祭典2008-08-14 01:11:27

 北京オリンピックは盆休みと重なり、時差もあまりないし、いつもよりたくさん中継を見ることができ、勝手に盛り上がっています。

 むかし、父と一緒にオリンピック中継を見ていたら、国の代表選手という形を廃止すべきだと珍しく力説されたことを思い出します。
 4年に一度のスポーツの祭典、それに向けて汗を流して努力したすべての選手に声援を送るべきで、確かに必ずしも国別対抗戦みたいな形にする必要はないかも知れません。マスコミにも煽られ、どうしても自国の選手ばかり応援してしまいますが。

 その話はともかく、今日はフェンシングで太田選手が銀メダルを取りまいた。日頃あまりマスコミ等に取り上げられないスポーツが、いきなり脚光を浴び、見ていてなんだかうれしいものです。
 1932年のロサンゼルスオリンピック、馬術大障害飛越競技で金メダルを獲得した西竹一とウラヌス号のコンビを思い出しました。馬術競技で日本人がメダルを獲得したのは、前にも後にもこのときの一度きりです。以前にここで取り上げた「馬上集」(http://tbbird.asablo.jp/blog/2006/12/14/1028357)にも、西さんの話が記されています。

 「馬上集」が発行されたのは1941年ですが、その4年後、バロン西こと西竹一さんが硫黄島で戦死しました。映画「硫黄島からの手紙」にも描かれて、比較的によく知られている話です。
 あまり知られていないのは、同じロサンゼルスオリンピックの水泳100m自由形で銀メダルを獲得した河石達吾さんも、やはり硫黄島の玉砕戦で亡くなったそうです。

 残酷な戦争は多くの命を奪い、たとえオリンピックのメダリストも、例外とはならないものです。

夏休みに読むべき本は紅楼夢?2008-08-14 09:15:59

 読むべき本はたくさんあろうに、最近の中学生はためにならぬ小説ばかり読みふけるとは、嘆かわしいことだ。
 いや、現在の中学生は小説すら読まず、「最近」とは、百年以上も前のこと。江戸風俗研究者にして東洋性心学会長であった岡本昆石が、明治36年(1903年)に発行された「近世百ものがたり」のなかに書いた話です。

 1906年6月号の「中央公論」の巻末に、「夏期学生の読物」なる特集ページが組まれた、と出久根達郎がエッセイに書いています。
 出久根達郎の文には書いていなく、詳細は未調査ですが、どうも同7月号にも特集の続きがあるようです。夏目漱石、泉鏡花など大家のエッセイリストに、それらしい痕跡が残っています。

 とりあえず6月号で言えば、幸田露伴は「俳諧七部集」「狂言」「謡曲」を薦め、柳田国男は「西鶴」「近松」「今昔物語」「日本霊異記」をあげたようです。
 露伴や柳田に限らず、当時の名士が推挙するのは、ほとんどが古典で、「吾妻鏡」「常山記談」「碧巌録」から、「枕草子」「万葉集」「新古今集」のようなスタンダート。近世の小説が少なく、「小説は学生が読むべき代物ではなかったのである。」(出久根達郎)
 はては「藩翰譜」なる大名の家系を記す本まで出てきます。

 そのなか、中国の小説「紅楼夢」を推奨した人がいたそうです。
 比べると、内容的には柔らかく、中学生にも受け入れそうなものか。

 とは言え、実はその頃、まだ翻訳が出ていなかったので、漢文をそのまま読む必要があります。当時の学生にとっても決して容易なことではないでしょう。漢文の読解力を勉強させたいのか、単に意地の悪い推薦書だったのか、結局、どちらかのでしょう。